野口聡一さん宇宙船搭乗へ。宇宙食「からあげクン」開発の苦闘とやりがい
日清創業者の強い思いで「宇宙食チーム」を結成
日清食品ホールディングス株式会社(以下、日清食品)の人気商品も宇宙日本食のラインナップに並んでいます。同社は、創業者の安藤百福さんの「人間はどこにいても、どんな環境でも食べていかなければならない。宇宙でも同じである」「宇宙食を開発したい」という強い思いのもと、2001年に宇宙食開発チームを結成。
そして、安藤さんは自ら陣頭指揮を執り、JAXAと共同で世界初の宇宙食ラーメン「スペース・ラム」の開発を成功させ、2005年の野口宇宙飛行士によるISS長期滞在の際に、携行品として宇宙に旅立ちました。
続いて2007年には、しょうゆ・シーフード・カレーと3種の「宇宙日本食ラーメン」、2020年6月には「日清スペースチキンラーメン」「スペース日清焼そばU.F.O.」「日清スペースキーマカレーメシ」「日清スペースハヤシメシ」の4品を開発し、宇宙日本食としての認証を取得しました。
なかでも「スペース日清焼そばU.F.O.」は、野口宇宙飛行士の「宇宙で大好物の焼そばを食べたい」との話があったことを受けて実現したもの。宇宙では調理時の湯切りができないため、お湯吸い切りタイプの麺の開発が大きな課題だったと言います。
日清食品の担当者は「宇宙食開発で培った技術は、今後、介護食や非常食などに応用できる可能性もあります。弊社はこれからも宇宙飛行士の宇宙での活動を『食』を通じて応援していきます」と語りました。
宇宙でも美味しく安全な「からあげクン」
社員の提案をきっかけに企業が宇宙食の開発に乗り出すケースもあります。大手コンビニチェーン・ローソンの看板商品と言えば「からあげクン」。1986年に発売開始して以来、レギュラー、レッド、北海道チーズ、レモンの定番商品に加え、地域限定の味やコラボ商品など、これまでに合計281種類を発売、シリーズ累計33億食以上を販売しています(2020年5月末時点)。
そして2020年6月にはついに、宇宙でも食べられるからあげクン、その名も「スペースからあげクン」が認定を受け、宇宙食の仲間入りを果たしました。開発した株式会社ローソン(以下、ローソン)マーケティング戦略本部の白井明子さんと、株式会社ニチレイフーズ(以下、ニチレイフーズ)研究開発部の金平佳乃さんにその経緯を聞きました。
――ローソンの白井さんは普段は、どのようなお仕事をされていますか。
白井明子(以下、白井):ローソンのマーケティング戦略本部で、キャンペーンやデジタルマーケティングを担当しています。’99年の新卒入社社員なのですが、その際、社内報で紹介された志望動機には「からあげクンが好きだから」と書いたくらい、からあげクンが好きなんです。
――白井さんの「からあげクン」愛が、もう早速伝わってきました。では、スペースからあげクンプロジェクトはどのような経緯で立ち上がったのでしょうか。
白井: JAXA様を訪問する機会があり、宇宙飛行士の方々数名とお話しました。その際に「お肉の宇宙食がない」「からあげクンいいですね!」と言ってくださったのが嬉しくて、社内プロジェクトを立ち上げる提案をしました。