ヴェネチア銀獅子賞の黒沢清監督「哀川翔さんが救いだった」不遇時代を語る
いい若手がいると本気になる
――受賞後のご取材では、監督とともに脚本に名を連ねた、濱口竜介さん(『ハッピーアワー』『寝ても覚めても』)、野原位さん(『ハッピーアワー』脚本)のことも高く評価されていました。監督が、いま注目している若手監督はいますか?「すごい人が出てきたな」と思うか、それともメラメラと燃えるタイプですか?
黒沢:あんまり言いたくないんですけど、意外に本気になるほうです。子どもじみた反応をしてしまいますね。
若手でそこそこ面白いものを撮ったりする人がでてくると、「いいねー、素晴らしいね」と言うんですけど、そこそこを超えて本当にすごいものを撮られると、「絶対に叩き潰してやる」というのは口が悪いですが、でも、対抗作を作らなきゃという気持ちにはなりますね。
――いまそうした存在は。
黒沢:どちらも教え子ですが、濱口と、あと真利子哲也(『ディストラクション・ベイビーズ』『宮本から君へ』)は際どいところにいますね。際どいというのは、今はまだ「良かったね、いいね」と言っているんですけど、あと1歩を越えられると、「叩き潰す!」となるかなと。それをさらに越えられたら、「あれを育てたのは僕だ」と自慢します(笑)。でもまだですね。まだまだ。
<取材・文・撮影/望月ふみ>