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2億円赤字を乗り越えて…「日本発のビジネスチャットツール」誕生秘話

ビジネス

 コロナ禍で半強制的にリモートワークが推進され、「Zoom」などのビデオ会議が普及。従来のビジネスコミュニケーションにあったさまざまな課題感を解消する、ビジネスチャットに注目が集まっている。

リモートワーク

画像はイメージです

 そんなビジネスチャットのひとつ「Chatwork」は、5月以降の登録ID純増数が36.5%増、課金ID純増数も61.9%増(ともに前年比)と高い水準を記録した。今回は前身企業「EC studio」から数えて20年という社歴を持つ、Chatwork社の山本正喜社長にインタビュー。2011年3月にリリースされるまでの紆余曲折を紹介する。

ゲームクリエイター志望だった学生時代

 2018年6月に体調不良で辞任した兄・敏行氏から社長職を引き継いだ山本氏。2000年頃のドットコムバブルと呼ばれる時代に、アメリカへ語学留学していた敏行氏の始めたインターネットビジネスが前身企業の創業につながっている。

「Googleのような検索エンジンもなかった当時は、相互リンクという文化があり、ホームページにアクセスを集めるためのいろんなノウハウがあって。兄のホームページ制作や集客で苦労した点やポイントをまとめたサイトが人気となったことで、インターネットの集客支援サービス事業を行うようになっていきました

 一方の山本氏はもともとゲームクリエイターになりたかったとのことで、当時はプログラミングを学ぶため電気通信大学に在学。ITについて学んでいたことで、敏行氏の仕事を手伝うようになったそうだ。

「やはりインターネットの技術に最初に触れた時は感動しましたね。モノづくりで人を喜ばせたいというのが原体験としてあって、僕自身は経営や起業に関心があったというわけではないです。どちらかというと、大企業に就職したほうがシステム開発やプログラミングの勉強がしやすくて、魅力的だと思っていました

大企業とベンチャーで異なる点は

山本正喜社長

山本正喜社長

 山本氏は大学卒業後、インターネット系の上場企業に就職。1年間の会社員経験もある。学生起業時代からの付き合いのあった会社に「コネで技術職としてねじ込んでもらった」らしい。

「超のつく営業会社で同期はみんな営業担当だったので、テレアポや飛び込み営業の研修も受けましたね。会社員生活は最高に楽しかったですよ。よく言うんですけど、整備された高速道路をいかに早く走るか競争しているのが大企業なら、起業家やベンチャーは獣道を切り開いていく感じで、必要なスキルセットも全く違いますね。IT企業の経営者もいろんなタイプがいて、兄は人の下にはつけない感じのタイプですけど、僕はサラリーマンの素質もかなり高いと思います(笑)」

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