元U18サッカー代表の29歳が「建築業界のオンリーワン」を目指すワケ
社員が一丸となってオフィス建築に参加
――手がけた主な建築物を教えてください。
蛯原:2014年6月から1年間かけて作った「GRIDS 秋葉原」。「旅と旅、人と人、心と心をスマートにつなぐ」がコンセプトで、一人旅に最適なドミトリールームにはPOD(ポッド)と呼ぶ二段ベッドが並ぶほか、2~4名むけの個室もあります。5階は女性専用。主に外国人をターゲットにしています。
また、原宿の新オフィスづくりは一大イベントでした。UDSの広告塔となるオフィスは事前にワークショップを開催し、社員がアイデアを出し合ったり、キーワードをピックアップして新しい共通言語を作ったりと、社員が一丸となってオフィス建築に参加しました。
できあがった原宿オフィスの1階は社員食堂兼、原宿に健康的な食事を提案するまちに開かれた食堂にしました。社員が食事や打ち合せをする場所であり、また、お昼時には近隣の人にも開かれた食堂です。
――これまで一番苦労したことはなんですか。
蛯原:新米の1年目は、現場では自分が何もできないことをひたすら思い知らされましたね。新米の僕が描いた図面を、現場の施工監督や職人さんがちゃんと引き直して、作ってくれる。
優秀なクライアントと施工技術者がいれば、建築ができあがるものだということを痛感しました。その時の経験が今に活かされていると思います。
建築にはコミュニケーション能力が不可欠
――現場では今でも試行錯誤の日々ですか?
蛯原:建築は50代から一人前と言われています。毎回手がけるたびに壁にあたっています。ものづくりの現場では当たり前のことですが、建築でもチーム力がとても大事です。技術だけでなく、コミュニケーション能力も必要不可欠。
――誰でも早く一人前になりたいものです。これまで努力してきたことは何ですか。
蛯原:経験が大切であることは間違いないでしょう。やり遂げて、ひとつのものを飛び越えて、成長していく環境をできるだけ作っていくことを心がけています。
――感慨深い仕事は何でしたか。
蛯原:ある地方のホテル改修案件でのことですが、稼働率が低くなってきているバンケット機能をやめて、客室を増やしたいという提案をしました。設計をリニューアルしただけでなく、ホテルの営業としても成功につながったので、地元のオーナー企業から最後に「ありがとう」という感謝の言葉をもらいました。愛着のある案件でした。
それから2018年1月に開業した沖縄・宮古島の「HOTEL LOCUS」は、初めての慣れない土地での仕事だったので感慨深かったです。実際に1年間現地に住み込み、宮古島の文化や歴史に毎日触れながら働きました。チャレンジの多いプロジェクトでしたが、無事に開業し今では多くのゲストに宿泊を楽しんでいただいていると聞いて嬉しい限りです。
「楽しむこと」がモチベーションをアップさせる
――蛯原さんが仕事で大切にしていることは何ですか。
蛯原:建築家の安藤忠雄さんが「財布の中にお金が入っているときと、入ってないときでは、ウィンドーショッピングの観点がまったく異なる」と述べていて、そのとおりだと思いました。仕事を楽しむという軸を持つことによって、アンテナに引っかかってくる。そのためにも常に作ることを楽しむということを意識しています。
――今後のビジョンを教えてください。
蛯原:これまで建築の仕事をいくつかやってきましたが、UDSは可能性のある会社なので、担当するプロジェクトの数を増やし、下の世代とも一緒に仕事する機会を増やして成長していければと思います。
<取材・文/夏目かをる 撮影/難波雄史>