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29歳・元看護師が被災地で「ゲストハウス経営」を始めた理由

ビジネス

新築オートロックマンションの都会暮らし時代

 2017年に自分たちの手でリノベーションしたゲストハウス架け橋はかなり古い民家だが、自分たちの手作り感のある綺麗な内装で、その雰囲気がまたこのスペースに人を呼び寄せているように思った。家の内装工事からトイレ修理まで、なるべくお金をかけずにできるだけ自力で修繕しながらこの場所が作られている。とはいえ、現場作業については「全く経験なかったですよ」と語る。

「それまで私、新築オートロックのマンションにしか住んだことなかったですから(笑)。すべては直面した現場経験から学んでいきました。修繕ももちろん、宿という事業に対しての経営、法律知識などもまったくなかったです」

 何ともたくましい話だが、不安はなかったのだろうか?

「都会にいると環境が揃いすぎて 『なぜ水が出るんだろう?』 とか考えたことなかったんです。それが気仙沼に来て、初めて生活面の不便さを感じて。お金もないし、どうしようもないので周りの人に聞くことで頭を使うようになりました。それを半年くらいしていると、自分で解決していけるようになっていろんな苦痛が逆に楽しさに変わっていったんです」

プライベートがないから会話が多い

気仙沼

「経験が人を変える」と言うが、彼女はまさに自ら環境を変えて自分を変えたのかもしれない。志田さんの考えるゲストハウスとはどんなところだろうか?

「ホテルがやりたいかといわれると違うんです。その場でコミュニケーションが生まれるかどうかを大事にしています。ここは自分も、お客さんもある意味、プライベートがない。もっと言えば、コミュニティスペースにたまたま寝床がついていたというイメージです

 だからこそ、このゲストハウスは昼夜問わず若い人が出入りしていて、生活している人たちの会話も多いのかと納得した。なぜそんな場を作ったのだろうか?

「旅に出たときにいろんな人に出会いました。そのなかで気づいたのは、自分が当たり前だと思っていた環境の外に、実はたくさんの人がいるってこと。自分は恵まれているから、もしそんな人たちの力になれれば、そこが自分の介在価値になるんじゃないかと思ったんです」

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