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都会とローカルで、お金の違い
最後に、そんな小山さんに都会とローカルの違いやお金事情について聞いてみた。
「地方で働くことで年収は確実に下がります。だけど、複数仕事を持てる柔軟さもある。さらに都会での副業案件を持っていることで、ローカルだけでなく生活も安定すると思います。もちろん、将来的に、本音ではもっと収入ほしいですが、現在は下がったなりの暮らしに適用しています (笑)」
都会と地方で複数の名札を持つことで、仕事と街への関わりの幅が広がっていく。大事なことかもしれない。
「ただ、食べ物は夏野菜、魚をもらえますし、住む家も圧倒的に安いです。それとお金を消費する選択肢が少ないことも都会とローカルの違いのように思います。たぶん都会と違って、消費の時間を地域のいくつかのコミュニティで何か生み出す時間にあてていることが多いです」
確かに私も気仙沼に住んでいた頃は、お金を使う機会が減った。近くに買い物ができる場所が少ないからだが、だからといって時間を持て余してはいなかった。
「東京でサラリーマンをしていたころは早朝に出社して深夜に帰宅の生活でしたが、今は週末に畑・草刈りをして、平日の日中はインバウンド事業などの会社で働いてから、夕方からはまちづくり会社のほうのミーティングもあったりなのでいろいろ忙しいですね」
まずは一歩踏み出してやってみる
ただ、これまでどうしても都会でないとダメだったこともあったという。
「セミナーや講演などで、あの有名な人の話を聞きたいってことがあっても、気仙沼ではやっていないので、そこだけは不自由をしていました。でも、今年になってからはコロナウイルスの影響もあり、オンラインセミナーが多くなってきたので、そこもクリアされつつあります」
ローカルは人が少ない。特に20代はもちろん、小山さんのように30代~40代前半で、上の代と下の代をつなぐ立場でできることはすごく大きい。
「ローカルの仕事は都会のサラリーマン時代と比べて不確実性が多い。だからこそ未開発ルートを自分で開拓できる喜びは大きい。コロナウイルスの影響もあってか、この先の社会が見えなくなっているなかで、『自分なりの正解を作る』『俺がこうやりたいからこうやる』ってモチベーションで、まずは何事も一歩踏み出してやってみるといいと思うんです。実際にやってみたうちのいくつかで、成果が現れたり、関わった人たちが何か活動を始めたりするのを見るときが、嬉しいです」
民間とまちづくりの違い、都会とローカルの違いを知る小山さんのような人材は今後日本中で求められていくのではないだろうか。
<取材・文・撮影/森成人>