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気仙沼へ戻ってくることになったきっかけ

 そしてここから小山さんは北陸から甲信越の新潟県、長野県エリアのまちづくり案件を中心に新たなキャリアをスタート

 基本的には、その地域に住んでいる住民が主体となるような地域のプロジェクトを推進。山間の地域にある廃校の利活用を地域住民と検討する場の企画運営。新潟県燕(つばめ)市での「若者会議」の創設に向けた仕組みづくりの支援している。

 十日町市での中心市街地活性化計画に基づいた住民交流施設のコンセプト・運営組織作りなどだ。そして、たまたまその仕事の最後に故郷、気仙沼市のまちづくりの方向性を示している総合計画を策定する業務に出合うことになり、それがきっかけで気仙沼へ戻ってくることになった。

小山

まちづくり会社時代の小山さん

「民間企業に所属して、大規模システム開発の現場で大人数の集団を動かすために『繰り返し伝える力』が重要だと学びました。一方でまちづくりに携わるなかで必要なのは『巻き込まれ力』。自分が巻き込みたいことがあるなら、まずは相手の土俵に巻き込まれることが大事なんです

 確かに、関係性がない人の主張を、まちの人が耳を傾けて主体的に動くことは想像しにくい。相手に共感され、双方のメリットを分かり合えることで初めて協働で事が成せる。だからまずは相手の土俵に飛び込むこと、巻き込み力とはそういうことかもしれない。

小山流「巻き込まれ力」の具体的な活用事例

小山

さまざま地域に入って取り組みを行っていた小山さんだが最後に故郷、気仙沼に戻ることになる

 小山さんは前段のインバウンドの事業とは別に「巻き込まれ力」を生かして自身で合同会社moyaiという法人を立ち上げ、まちづくり支援の事業も行っている。

「最近、とある地域の公営住宅の住民・自治会と、親睦のために商店街と顔合わせの場をセッティングしたら、5分でもの別れになってしまったんです(笑)。関係者には、事前にヒアリングしていましたが、さまざまな過去の関係性が強く影響していることを改めて知る機会となりました。2度目の会合では我々のような第三者が両者の間をとりなすことで障害を取り除きました」

 そんな現地の方々に小山さんは思い切り巻き込まれながら、当事者となって事を進めていく。

「その後、しっかりと両団体が親睦、交流する機会を何回か設け、結果としては大変有意義な共同企画の交流イベントを作ることができました。一方で、気仙沼市内で何かやりたいことを実現したい! と、モヤモヤしている人たちが意見交換できる場「企みナイト」を定期的に開催しています。例えば、リノベした地域の銭湯で毎月26日を風呂の日(2=ふ、6=ろ)としていたのですが、新たに銭湯内でライブをやったり、地元の野菜販売会をやったりしました。やっぱり地元の人が楽しくないと、観光客として訪れる人たちにとっても、魅力的な地域に見えませんからね」

 多いときは1年間で各地域の人、総勢300人以上にヒアリングをしながら事業をしていくという。これはまちづくりを生業にしていく人間として非常に重要なことのように思う。

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