元NTTデータ社員が、被災地で仕掛ける「養殖体験ツアー」がウケた訳
牡蠣養殖体験プログラムを観光ツアーに
こうしたリサーチをもとに誕生したのが「気仙沼の牡蠣養殖体験プログラムを組み込んだ東北ツアー」だ。実際、漁師の船に乗って交流し、牡蠣小屋で剥いた牡蠣を食べるというツアーはかなり珍しい。
マレーシアの現地では「この商品はエクスプルーシブ(他にない良いもの)だ」という評価を得て、多くのインバウンド需要を気仙沼にもたらした(新型コロナウイルスの影響で、ツアーは中止せざる得ない状況になっているが、復活に向けて動き出している)。
現在、私は観光庁の専門家として多くの自治体の「どうやってインバウンド客を我が街に呼ぶか?」という課題について情報を集めているが、この小山さんの企画した官民共同型の事業スキームの話はモデルケースとしてよく話している。
民間のスキルとまちづくりのスキル
そんな小山さんだが、なぜ生まれ故郷である気仙沼で働くことになったのか。「正直、気仙沼に戻るつもりはありませんでした」語る本人に話を聞いた。
「東京の大学でお世話になったゼミの先生が国の元事務次官で、国の機関を訪問し、パブリックの仕事の様子をよく見させてもらったんです。当時は森喜朗首相で、政府主導の『IT革命』という言葉が出ていた頃。これからの時代は『パブリック×IT』になるだろうと、うっすらイメージしていました」
大学卒業後は大手システム会社の株式会社NTTデータにシステムエンジニアとして就職。しかし、入社10年目に東日本大震災が起こる。ここからパブリックの仕事に目覚めたという。
「当時は民間としてのITスキルはあるけど、パブリックなまちづくりのスキルがない。なので、思い切って会社を辞めて、コミュニティデザインの手法で全国のまちづくりを支援する株式会社studio-Lに個人事業主として参画しました」