木村花さんも苦しんだ「ネット中傷」。弁護士も悩む、定義のあいまいさ
5月23日に死去した「テラスハウス」(フジテレビ、Netflix)に出演していた女子プロレスラー・木村花さんの一件をきっかけに、ネットの誹謗中傷に対する社会的関心が高まっています。最近ではアンジャッシュ渡部建さんの不倫騒動で、無関係の一般女性が、不倫相手だと勘違いされ、誹謗中傷を受けたという被害もありました。
7月10日には、木村花さんの母である響子さんが、「誹謗中傷ツイートのスクショをリプライで送ってほしい」という趣旨のツイートを発信。その意図は明らかでない点もありますが、賛同した多くのユーザーからスクショが寄せられていました。
そこで気になったのは、法律ではネットの誹謗中傷(ネット中傷)について、どのように規定しているのかということ。弁護士で公認会計士の資格を持つ後藤亜由夢氏に話を聞きました。
「誹謗中傷」を定義するのは難しい
そもそも「誹謗中傷」は、法的にはどのような解釈となっているのでしょう?
後藤弁護士は「一般的に、誹謗中傷は悪口などにより他人を傷つけること捉えられますが、法的に定義するのは難しい」と語ります。
木村花さんの死去を受けて、著名人の中には「誹謗中傷には法的措置をとる」と明言する人も増えていますが、法的な定義がないのに「法的措置」がとれるのでしょうか。
「具体的に法的措置を取るとしたら、名誉毀損、プライバシー侵害、信用毀損(経済的な信用を毀損すること)に当てはめた対応が考えられます。民事上なら損害賠償請求、刑事上では名誉毀損罪、信用毀損罪、侮辱罪などで告発するということでしょう」
最大で3回の裁判が必要に
法的措置をとる際には、書き込んだ者のアカウント情報の開示請求を行うことになります。誹謗中傷の書き込みがあったサイトの管理者にはIPアドレス、プロバイダーには住所などの個人情報を請求しますが、すんなり進まないこともあり……。
「慰謝料請求まで含めると最大で3回の裁判が必要になります。まずサイト管理者に対し、任意での書き込みIPアドレスの開示請求を行い、サイト管理者が任意で応じない場合、1回目の裁判として、サイト管理者に対して『IPアドレス開示請求の仮処分』を行います。
次に判明したIPアドレスに基づき、経由したプロバイダーを特定し、2回目の裁判として、プロバイダーに対する『発信者情報開示請求訴訟』を提起します。これら一連の手続が『発信者情報開示請求』と呼ばれています。
勝訴した場合、プロバイダーから、書き込みを行った者の氏名、住所等が開示されます。その後、判明した氏名などに基づき、ようやく3回目の裁判として、『慰謝料請求訴訟』を行うことになります」