サラリーマンが会社を買う、新たな副収入が人気。1000万円で買収した人の場合
予断を許さない国内の新型コロナウイルスの流行状況。第2波は“あって当たり前”と考えるべきだろう。では、こうした状況下で「働き方」の視点で考える個人の防衛策としてできることは何か?
近年、注目を集める個人M&A。個人が企業や事業を買収して「社長になる」という、新たなキャリアの形として認知され始めている。
コロナ禍こそ固定費が小さい事業を買う
都内で経理職に就く木村正さん(仮名・54歳)は、今年の3月末に個人M&Aで都内にある整骨院を約1000万円で買収した。
「まずは自己資金内で買えること、黒字経営というのを条件に、M&Aのプラットフォーム『TRANBI』で探しました。その条件でいろいろな業種を比較しましたが、整骨院は需要の高い業界で、ここは現場のスタッフだけでオペレーションが回るというのが理想に近かった。すでに2月にはコロナの影響があったので値下げ交渉の材料にはなりましたが、ほかからもアプローチされていたので値下げ交渉などせずに決めました」
譲渡後の4月は売り上げは前年比50%以下と赤字だったが、マイナス分は持続化給付金で補てんできた。それ以降は客足も戻りだして黒字が続いているという。
「やはりローコスト運営なのが赤字を減らせた要因ですね。固定費は毎月20万~30万円ですが、コロナ禍は宣伝費もかからず、スタッフ5人は業務委託契約の出来高払いなので人件費も抑えられていました。ただ盲点だったのが、キャッシュレス決済サービスの導入です。個人間の引き継ぎの手続きが面倒で、新しく契約し直そうとしたのですが、コロナで余計に時間がかかって大変でした」
副収入の選択肢を広げるための事業買収
お店は最低限のダメージで済んだが、従業員にとって給料減であることに違いはない。そこで「普段よりも密にコミュニケーションを取るようにしていた」と話す。
「やはりオーナーがほっとくだけでは不満が溜まるので、2日に1回はお店に顔を出してアフターケアをしていました。できればスタッフも正社員にしたいのですが、収益を見ながら、まずは福利厚生から手厚くしようと考えています」
今後はコロナ第2波も心配されるなかで、将来戦略についてどう考えているのか。
「当面は無理せずに経営を続けていくことが先決ですが、ゆくゆくは2店舗、3店舗目と増やしていきたい。もともと副収入の選択肢を広げるために事業買収をしたんです。今は本業と不動産の家賃収入が安定していますが、60歳をすぎたら本業が難しくなるかもしれない。だからそれまでには収入の柱として育てていきたいですね」