ヤマト運輸、コロナ対策の「神対応」が話題に。売り上げへの影響は?
2016~2017年、労働基準法違反で是正勧告
営業収益を踏まえて、次はセグメント別の営業利益を確認していきましょう。ちなみに営業収益とは、企業の営業活動によって生まれた収益のことです。一方で営業利益とは、販売費及び一般管理費(いわゆる「販管費」)を差し引いた利益のことです。
売上額はデリバリー事業の圧勝だったものの、営業利益については変動が大きい状況でした。なお、「その他」の金額が大きいのは、ヤマトHDの「その他」集計データにグループ各社からの配当金が含まれているためです。
2017・2018年度のデリバリー事業の営業利益の落ち込みは、主に「働き方改革」の実施による人件費などのコスト増が要因でした。これは2016~2017年にかけて複数の事業所で、時間外労働に対する賃金が支払われていなかったため、労働基準監督署からの是正勧告を受けたことへの対応です。
とはいえ、2019年度にはこのコスト増を吸収して、以前の利益水準に回復しているので、働き方改革には一定の成果が出ていると言えるでしょう。
経営構造改革プランを推進中
2019・2020年度にホームコンビニエンス事業にて営業赤字が発生しているのは、2016年から発生していた引越事業での法人への過大請求が発覚し、2018年8月末に引越事業を停止したことによる影響です。ただし、他の事業が全て営業黒字になっているため、影響は軽微であると考えられます。
このように、セグメント別推移を確認したところ、売上・営業利益ともにデリバリー事業(小口貨物輸送)が全体をけん引していることが明らかになりました。これは、デリバリー事業の業績悪化によって全社的に大打撃を受ける可能性が高い構造だと言えます。今後は比較的好調であるうちに、他の事業領域を育てていく必要があるでしょう。
もちろん、ヤマトHDではこの課題を認識しており、構造改革プランの主軸として「宅急便のデジタルトランスフォーメーション」「ECエコシステムの確立」「法人向け物流事業の強化」の3つを掲げて経営構造改革を推進中です。
特に「ECエコシステムの確立」については、冒頭でも触れたとおり、今後も引き続き需要増が見込める分野です。EC各社に対して、倉庫内の物流・在庫管理から抑える動きが実現できると、業界内の地位は盤石になり、どのECサービスを使っても、ヤマト運輸の高いサービスレベルを安定的に享受できる状況になるため、利用者としてもより便利になると考えられます。