富士そば従業員「このままでは生活できない」新型コロナの影響で悲痛な訴え
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、4月7日、改正特措法に基づく緊急事態宣言が発令された。大手ファミレスチェーンや飲食店などが時短営業、一部店舗の休業といった対応を行っているが、こうした事態に不安を抱えているのが、派遣社員や契約社員たちだ。
不安定な雇用環境ゆえ、シフトカットによる賃金減少や、突然の雇い止めといった危機に直面している。
4月17日、首都圏青年ユニオン飲食業分会「飲食店ユニオン」は、東京都内を中心に立ち食いそば屋チェーン「名代 富士そば(富士そば)」を経営するダイタンキッチン株式会社への「コロナウイルス関連での団体交渉申し入れ」に関する記者会見を行った。
富士そばで働く非正規労働者の現状
「ゆで太郎」「小諸そば」とならんで立ち食いそば屋3大チェーンとも呼ばれる富士そばは、1966年の創設以来、東京、埼玉、神奈川、千葉の1都3県に約130店舗を展開する大手外食チェーンだ。
かけそば1杯310円というリーズナブルな価格かつ、ほとんどの店舗で24時間営業が行われている(東京都の「営業時間短縮」要請に従い4月14日~5月6日、20時までの時短営業中)のも特徴で、サラリーマンの空腹を昼夜問わず満たす心強い味方だった。
しかし、記者会見に出席した首都圏青年ユニオンの栗原耕平事務局次長は、富士そばで働く非正規労働者の現状についてこう語った。
「2名の調理員が狭い調理場のなか、シフト制で働いているため、常に社会的距離(ソーシャルディスタンス)を取ることが困難。お客は、カウンターではマスクを外して食事をするので、せきやくしゃみの飛沫をかぶることもある。また、食券の受け渡し、手渡しでの金銭授受、新型コロナに感染するリスクがある」
ユニオン側から富士そばへの申し入れ
こうした状況に置かれた従業員のなかには「コロナにかかって死ぬか、働けずに飢えて死ぬのどちらかだ」(栗原氏)という声が漏れたという。
とはいえ、今の仕事を辞めることは、非正規労働者にとっては収入の途絶を意味する。その後の雇用が維持される保証もないため、現実的ではない。そこで、飲食店ユニオンは4月14日、富士そばを運営するダイタンホールディングス株式会社とダイタンキッチン株式会社(代表取締役社長 丹有樹)に対し、3つの要求を行った。
1つは調理場や接客時における従業員のコロナウイルスへの感染リスクを避けるため、当面の間、雇用調整助成金の活用と従業員の給与の全額補償を前提に、営業を停止すること。
2つ目は、従業員の生活に困難をもたらしているため、シフトカットされた分についての給与を全額補償すること。さらに3つ目が、現在休業手当の90%が助成金として企業に支給されている「雇用調整助成金」の活用をすることだ。