「SNSで人は攻撃的になる」ゲイの精神科医が語る、SNS社会との付き合い方
ゲイである事実と向き合い、悩む
――研修医時代、ご自身にも深く思い悩むことがあったということですか。
Tomy:もともと何かになりたいというのがなくて。強いていえば、本がすごく好きだったので小説家になりたかった。でも現実的ではないし、ゼロから目指すことはできなかったんですよね。
研修医の頃までは親が敷いたレールの上を進んでいました。両親が自分の子どもに「こうして欲しい」と言ってしまう人で、このまま医者になって後を継いで、結婚して子どもができて、でもできれば結婚相手も医者がいい……というような(笑)。
一方で当時の自分はゲイである事実を今後どう処理するかで悩んでいました。別にゲイだとしても心の中に留めておけば、結婚して子どももできる。誰にも言わず墓場まで持っていけるだろうと考えていた時期もありました。
精神科医から見たSNS社会
――今回の新刊はTwitterがきっかけとなった1冊ですが、SNSが浸透する現代の社会をどのように捉えていますか。
Tomy:まず良い点として「見捨てられ不安」といわれるような症状や、誰かに相手をしてもらわないと落ち着かないという「パーソナリティ障害」があります。彼・彼女らにとってSNSは日常に不可欠な居場所になっていますよね。今まさに感じている孤独をつぶやいたり、リプライを送ってもらったりすることで、心の隙間を埋めている側面はあると思います。
誰でも情報発信できるようになった分、当然、情報の質が玉石混交になってデマとかも広がりやすくなります。あとは人って自分が発信できる立場になると、つい気が大きくなって攻撃的になりがちです。誰かが適当なことを書いたことに対して、別の誰かが過剰に反応してしまう。無責任な情報発信は炎上の火種にもなりかねません。
昔は限られた人だけが情報を発信していました。物を吟味することや変なことは書けないという自制が働いていたし、読み手にとってみれば情報自体に信頼性がありました。そもそも炎上といわれるような事態もなかったわけですからね。