東大卒の35歳厚労省官僚が「プロのキックボクサーになった」理由
2019年4月1日に働き方改革が施行された。これまで当たり前のように存在した時間外労働に上限規制が設けられたことで、企業が定時になるとオフィスの照明を消して社員に帰宅を促す光景も珍しいものではなくなった。
とはいえ働き方改革は施行されてまだ間もない。今もなお仕事に忙殺され、自分の本当にやりたいことが後回しになっている若い人も少なくないはず。
「実生活で二足のわらじを両立させるのはなかなか大変なことです。ですが、少しの辛抱でそれ以上のものが得られると感じるなら、遠慮しないでドンドンやったほうがいいと思いますよ」
柔和な笑顔でそう話すのは、東大法学部卒業後に厚労省に入省。現職の国家公務員でありがらプロキックボクサーとして「K-1 KRUSH FIGHT」のリングで活躍する“戦う官僚”こと、バンゲリングベイジムの松本篤人氏(35歳)だ。
異色の経歴の持ち主である松本氏が実践する、独自の経験と思考に基づいた自分らしさを引き出せるライフメソッドとは?
国家公務員とプロのキックボクサー
――激務であるはずの国家公務員とプロのキックボクサーを両立させるなんて凄すぎます。
松本篤人(以下、松本):自分としてはなんとか両立させているつもりなんですが、やはりどうしても厚労省の仕事が多忙というのもあって、キックに割ける練習時間は少ないというのが実情です。
――そういう状況にもかかわらず、先日の試合ではK-1世界ウェルター級トーナメントで3位入賞経験のある山際和希選手と延長ラウンドまでもつれ込んだ末に、見事勝利をもぎ取りました。
松本:山際選手のミドルキックはめちゃくちゃ痛かったです。しかも偶然のバッティングが原因で左目尻をカットしちゃったので、僕が公務員ではなく営業職の人間だったら、試合後、上司にこっぴどく怒られていたかもしれません。
仕事の激務に耐えるパワーの源に
――確かに(笑)。それで官僚兼格闘家という驚くべき二足のわらじですが、いったいどうやって両立させているのですか?
松本:周りの人には「なんでキックボクシングみたいなしんどいことやるの?」とよく聞かれます。でも僕の場合は、どんなに忙しくてもキックを楽しんでいる時のほうが家庭も仕事もうまくいくことが多くて(笑)。
試合に勝ったら3か月間くらいは勝利の余韻に浸れますから、それが仕事の激務に耐えるパワーの源になってくれます。なので僕的にはメンタル面で潤いがたくさん出る趣味というのは、とてもメリットのあることだと捉えているんです。