ラグビーW杯で外国人が「新宿ゴールデン街」に殺到。組合側は対策も
組合側は英語で「喫煙・飲酒禁止」と忠告
こういった惨状から、ラグビーW杯の試合開始を境に、ゴールデン街商業組合には多数の苦情が寄せられた。すぐに組合側も、注意喚起を促すチラシを各店舗に配布。ここ数日は、筆者が確認した限りでも、英語表記の路上での喫煙・飲酒、騒音の禁止を忠告する張り出しも見かけるようになった。
前出のバーテンダー・Oさんは「大らかさこそがこの街の魅力だったのに、一部のモラルがない人たちの影響でこんなことになるなんて」と、落胆している様子。だが、デメリットばかりではない。「避難所として2階店舗を利用する人が増えた」と、嬉しい誤算もあった。
「『他の店で飲んでたんだけど、外国人だらけでいつもの雰囲気じゃなかった。英語が得意なわけでもないから』って。最近では“日本語以外お断り”という注意書きを入り口に張り出さざるを得なくなったようなお店もあるんですよ。
だって、みんな同じお金と時間のコストをかけて、息抜きとして飲みに来ている場所なんだから。店側の都合はともかく、やっぱり常連さんたちにはなるべく窮屈な思いをさせたくないっていう気持ちは切実ですよね」
しかし、これを来年に迫った東京オリンピックの予行演習と考えると、まだまだ万全とはいえないのが現状。ラグビーが盛んな欧米圏だけでなく、世界各国からの集客が見込まれている。そんな現実を前に、同じくOさんのお店にいた50代のサラリーマン・Tさんは希望を持ってこう話す。
「僕たちって、前回の東京オリンピックが開催された数年後に生まれてるから、今までずっと『オリンピックってすごかったんだよ』ってことを上の世代の人たちに聞かされ続けてきたの。だから、来年はようやくその非日常を体験することができるんだ! ってワクワクしてる。特にゴールデン街はその影響を強く受けることになるだろうから、期間中は開催地の雰囲気を存分に堪能しようと思っているよ」
“cheers”は日本語でなんて言うの?
そしてもちろん、日本にも様々な価値観を持つ人がいるのと同じように外国人も千差万別。「迷惑客はごく一部で、ほとんどの場合は良識的な人だ」とOさんは言う。
「このあいだ旅行客に“cheers”は日本語でなんて言うの? と聞かれたので乾杯だよって教えたら、嬉しそうに何度も『カンパイ!』って。ああいうコミュニケーションは飲み屋ならではの素敵なものですよね」
自由で居心地のいい雰囲気がなくなってしまうのは残念だが、2020年の東京オリンピックに向けて、路上飲酒のマナーの徹底など、誰にとっても楽しめるゴールデン街になってほしいものだ。
<TEXT/佐藤麻亜弥>