日本の鉄道は凄い!東京メトロの研修にフィリピン運輸省が参加したわけ
東京メトロの心臓部「総合指令所」
総合指令所は、東京メトロの車両や駅設備など、あらゆる部分をコントロールする、いわば心臓部。セキュリティーの都合上、現地見学できず、DVDで案内する。
ここは運輸指令、車両指令、情報指令、電力指令があり、全9路線の運行状況がリアルタイムに表示されるほか、列車の車輪の振動を計測、駅に設置されているディスプレイの情報発信、62か所ある変電所の管理などを行なう。
また、ダイヤ乱れが発生すると、ダイヤを組み替え、正常運転に戻す作業も行なわれる。
営業列車の乗務員室に乗り込む
講義などが終わり、フィリピン政府運輸省職員が5本の列車に分乗し、中野坂上―方南町間を1往復する。乗る車両は先頭車の乗務員室。ここで運転士の所作などを視察するのだ。
丸ノ内線は全列車ワンマン運転。なおかつ、ATO(Automatic Train Operation:自動列車運転装置)を導入しているので、運転士は乗降用ドアの開閉やホームなどの安全確認を行なう。また、運転技能維持のため、ATOを解除して手動運転を実施することもある。
東京メトロでは全駅のホームドア設置を進めているほか、全路線のATO化を予定している。これはホームドアの設置により、停止位置の精度向上が求められるためだ。銀座線のように、ホームドア設置前からTASC(Train Automatic Stopping Controller:駅定位置停止装置)を導入していない東西線や半蔵門線では、運転士のウデでホームドア設置駅に停車しなければならず、社内では「根性止め」と言うそうだ。
世界に広がる日本の鉄道の技術力
東京メトロ国際業務部の谷坂隆博課長に、「今後、海外との業務提携や研修の予定」について、聞いてみた。
「JICAさんの御指導で、ホーチミンの1号線を運営する会社の支援をやっているところです。“今年度(2019年度)中に研修をやろう”と考えているところです。また、同じようなプロジェクトを今後もほかの国でありましたら、やっていくと思います」
日本の鉄道の技術力は、海外でも注目されているほか、海外にも売り込んでいる。例えば、台湾高速鉄道の車両は日本の車両メーカーで新製され、新幹線の技術が海外に採り入れられた初の事例となった。
JR東日本も丸紅、東芝と共同でタイ王国バンコク都市鉄道のパープルライン(チャローン・ラチャタム線)の事業に参画し、2016年8月6日に開業した。
インバウンドの増加で、外国人が日本の鉄道を体感、評価する時代に入ったといえる。帰国すると、母国の鉄道に物足りなさを覚える人もいるだろう。日本の鉄道の技術力は、今後海外の鉄道を大きく発展させる切札になってほしいことを願う。
【取材協力:東京地下鉄】
<取材・文・撮影/岸田法眼>