伊藤忠を辞めフリーター生活を経た哲学者が見つけた“働く目的”
「良い会社に入れば幸せ」に疑問を感じた
――その後、大学院にも通うことになりますね。
小川:もともと大学院に行くつもりはありませんでした。ですが、学び方を模索しているときに、働きながらでも通うことのできる、名古屋市立大学大学院の昼夜開講コースを見つけたんです。そこで社会を変えるための哲学、公共哲学を学び始めることにしました。
2年かけて修士課程を修了。その後、博士課程の途中で徳山工業高等専門学校で哲学教員としての職を得て、今に至ります。
――働きながら、家庭もあり、途中で子育てもあったとのことですが、それでも学び続けられたモチベーションは何だったんですか。
小川:人生で初めてやりたいことをやれている充実感がありました。“いい学校を出て、いい会社に入れば幸せに生きられる”という価値観しか持っていなかったのですが、それに疑問を感じてしまった。でも会社をやめ、だからこそ、ようやく「これだ」というものを手に入れられた。家族もそんな私の懸命に生きる姿を見て応援してくれたのだと思います。
20代社会人が抱える悩みに回答
――小川さんは教員となってからは哲学者として、テレビ出演、執筆など以外に哲学カフェを開き、市井の人の悩みにこたえる活動もしています。「働きたい場所で働けない、かといって、長く働いていれば生活が上向くかといえばそうでもない」という20代社会人はどうやって働く目的を見つければいいのですか?
小川:自分の得意なもの、適性、好きなものを早く見つけることだと思います。私もそうでしたが、それさえ見つかれば、あとはどう進むべきかが見えてきます。いろいろやってみることで発見できるはずです。『5辛大盛がさえないボクに教えてくれた幸せな生き方』でも主人公が、自分の好きなことである「カレー」のおかげで、少しずつ自分のしたいことへ向け前進していきます。
――選択の自由という言葉もありますが、家族が怖いし、プライドもある。一歩を踏み出すのが難しい。こんなときは、どうすればいいのですか?
小川:人生100年時代といわれる中で、今まさに「自分軸」で生きていくことが求められています。団体で動くパックツアーのような人生設計はもう終わりです。人と違うことをすることが、自分の希少価値を上げる、そして自分の希少価値が上がれば当然成功するというふうに、発想の転換が必要です。成功者はみなそうやっている、ということに目を向けるといいと思います。