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ラブストーリーから階級差別を描く。インドの女性監督に聞く

暮らし

インドの古い世界と新しい世界

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©2017 Inkpot Films Private Limited,India

――廊下や壁のアイディアは脚本を書いている時点で思いついたのですか?

ゲラ監督:脚本を書いているとき、すでにアパートのレイアウトは頭にあって、廊下や壁で“距離”を表現しようとは思っていましたが、プロダクションデザイナー(美術)と話し合ううちに、壁を格子状にしてスペースを大きく見せたり、格子状にすることでリビングや廊下にいる人たちを同時に撮影でしたりすることを思いつきました。

 なので、当初考えていたアパートのレイアウトより、ずっと素晴らしいビジュアルになったと思います。

――ヨーロピアンとインディアンテイストが混ざった、鮮やかな色使いでシックなアパートですよね。東西文化が融合したインテリアに仕上がっています。

ゲラ監督:あれはスタジオのセットじゃないんですよ。何にもないアパートをリノベーションして部屋を壊したり、壁を作ったりしたんです。アシュヴィンのベッドや本棚はイギリスの植民地時代に作られたヴィンテージのイギリス製家具で、私の従姉妹から借りたもの(笑)。そしてもちろん、インドのモダンな家具、テキスタイルやアートも使っています。インテリアからも本作のテーマであるインドの古い世界と新しい世界を表現しました。

ファッションとアイデンティティの関係

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©2017 Inkpot Films Private Limited,India

――ファッションデザイナーになりたいというラトナの夢、そして、彼女の服装が原因で受ける階級差別。ファッションがこの物語で重要な役割を果たしています。

ゲラ監督:ラトナの妹が「ムンバイには映画スターみたいな人達が一杯いるわよね。私たちとは違う格好をしてる人達が」と言うシーンがあります。服装で自分の属する階級がある程度分かってしまう……。ラトナはテレビや映画でファッションに対する憧れを抱いていて、ファッションはこの物語では“願望”も意味しているんです。

 例えば、ラトナは映画の冒頭では、サリーにマッチする地味なトップスやスカートを身につけていますが、ストーリーが進むにつれ、チェックと花柄などアンバランスなコーデをするようになります。つまり、彼女は“自分らしさ”を“遊び”を取り入れた服装で探求するようになる。女性にとってファッションは“自分らしさ”を表現するツールと同時に、それを抑圧するツールにもなり得ます。

 私だって「ジャーナリストや映画人として見られるにはオシャレしすぎかしら?」なんていまだに気にしてしまう。彼女の成長をファッションからも表現したかった理由には、ファッションが女性のアイデンティティと密接な関係性があることがおもしろいと思ったからです。

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