ホステスが孤独死と向き合う「特殊清掃人」になった理由
鼻をつく死臭に耐えながら、真夏の炎天下でもニオイを室外に出さないよう、締め切った空間で家主のいなくなった部屋の後始末をする特殊清掃という仕事。
これまでの記事では過酷さをきわめるその清掃現場に密着。そこには日夜、孤独死と向き合い続ける人びとが働いていました。前線に立つスタッフは、どのような思いから業界へ足をふみ入れたのか――。
東京・大田区を拠点に特殊清掃や遺品整理を手がけるブルークリーン株式会社で働く女性、仁井田奈美さん(36歳)に話を聞きました。
六本木のベテランホステスから特殊清掃の道へ
昨年からアルバイトとして特殊清掃の仕事へ関わるようになり、今年5月から正社員として働き始めたという仁井田さん。前職は「水商売をやっていました」と経歴を振り返ります。
「ブルークリーンへ正式に入社するまでは、六本木で14年ほどホステスとして働いていました。今年5月まではかけ持ちしていましたね。水商売で働き始めたのは18歳からでしたが、お店で一緒になった女の子で片付けられない子も多いと知り、整理整頓が得意だったので手伝っていたんです。
そのうち誰かから『整理収納アドバイザー』の資格をすすめられて取って、転職しようとしていたんですけどなかなか見つからなかったところで、知人から今の会社を紹介され、働くようになりました」
「散らかったモノがキレイになっていくのが好き」
テトリスのように「散らかったモノがキレイになっていく様子を見るのが好きだった」という仁井田さん。初めての現場は「生前整理でした」と話します。
「初めは徐々に、まだ亡くなられていない方の遺したいものを整理する作業からかかわり始めました。孤独死された方の特殊清掃現場に携わるようになったのは、仕事を手伝うようになってから1か月ほどです。言葉で説明できないほどのニオイが立ち込めているとは聞いていたものの、自分はわりと平気でした。
夜の仕事ばかりしてきたので、身体が慣れるかは不安もあったのですが、時間の流れも気にすることなく昼間に動くと夜もすぐ眠れるようになりました」
原則として、休日は月6日。現場がある日は朝早くに集合して、午後には部屋にあった有価物を保管する倉庫へ向かうのが1日の流れだといいますが、休みでも「仕事に役立てばと電気工事士の資格を勉強している」と話します。