20代男子・特殊清掃人が「孤独死現場」で見たもの
体液の跡からわかる“故人の最期”
伊豆さんともう一人、話を聞いたのは個人の外部スタッフとして協力している小阪直之さん(仮名・27歳)です。1年半ほど前、友人と共同経営していたリフォーム会社を通して特殊清掃の現場へたずさわり始め、半年ほど前から他社での営業職とかけ持ちしているといいます。
「僕が担当しているのは、主に現場の解体作業です。初めて入ったのは23区内にあった孤独死された方の部屋で、真夏のさなかだったのでニオイが漏れ出るのを防ぐために、窓を閉めっきりの状態で蒸し暑かったのも憶えています。
フローリングの張り替えを依頼されたんですが、明らかに人の形をした体液が残っていて、玄関へ向かって頭が、廊下側に足があったのがクッキリと分かり、故人はおそらく『最後の最後でも助けを求めていたんだろう』というのが伝わってきて胸が苦しくなりました」
なかにはニオイに堪えられない人もいる
外部スタッフとして「前線に立っているスタッフの方々は尊敬に値します」とつぶやいていた小阪さん。この仕事に向いているのは「根性がある人」だと話します。
「僕は外部から必要なときに協力しているのみですが、日夜、いろいろな場所を飛び交っているスタッフの方々は素直にすごいと思えますね。リフォーム会社の経営に関わっていた当時、後輩のスタッフが『道具に付いたニオイが耐えられないのでやりたくない』と音を上げたときもあったんですよ。
消毒したものの、その後も同じ道具を使うたびにフラッシュバックする悩みも抱えていました。初めて入った現場で、その部屋にあったスプーンで依頼主からいただいたアイスクリームを食べたのも忘れられません」
前線に立つスタッフと、外部から仕事を支えるスタッフでは、それぞれ立場や視点も異なりますが、遺体が引き上げられたあと、間接的にも人の“死”にふれる現場の声からは、独特な大変さが伝わってきます。
<取材・文・撮影/カネコシュウヘイ>