転勤族の災難。使わないサーフボードと共に「次は群馬かよ…」
新たに物事を始めるとき、形から入ろうとする人は多いはず。特に趣味の場合、レンタルするのは嫌だからと最初に道具一式を買い揃える人も少なくありません。
「28歳のとき、以前からずっとやりたかったサーフィンを始めようと思い、ネット通販でサーフボードやウェットスーツなど道具一式を買ったんです。けど、海へ波乗りに行ったのはたったの4回だけ。あれから6年が経ちますが、一度もサーフィンはしていません」
そう語るのは、大手食品メーカー社員の近田宗典さん(仮名・34)。ただし、本人は、三日坊主ではなく「サーフィンをしたくても環境的にできなくなった」と言います。
始めたばかりのサーフィンを断念
会社から北海道の旭川への転勤を命じられた、近田さん。拒否することもできず、本人は「行くしかないじゃないですか」と語ります。
「調べたら北海道でもサーフィンができることは分かりましたが、水温が低いので僕が持っていたウェットスーツは使えず、やるなら保温性に優れたドライスーツを新たに買う必要がありました。
しかし、一番のネックは旭川からだと一番近いビギナー向けのサーフスポットまで高速を使っても車で3時間かかること。往復の移動で6時間はさすがにキツいので諦めました」
その後、3年の任期を終えて再び異動を命じられますが、今度の赴任先も同じく内陸の群馬県。それでも「いつか使う日が来るはず」とサーフボードを捨てられずにいます。
結婚後も嘘をついて部屋に保管
初心者用にしては少し高いモノを買ったため、揃えるの10万円くらいかかり、もちろん元は回収できていません。
「今は旭川時代に出会った女性と結婚し、自宅にサーフボードを保管しているのですが、完全に部屋のオブジェと化しています。
嫁からは『場所を取るし、倒れて子供に当たったら危ない。ただ飾っておくだけなら処分してほしい』って言われますが、高いお金を払ったのに捨てられませんよ。だから、『若いころの大切な思い出が詰まっているから』と嘘をついて今も部屋に置かせてもらっています(笑)」
サーフィンに対する未練はまだあるようですが、実際に再び始めることはあるのでしょうか?
「次の転勤で海の近くに引っ越すかもしれませんし、そのときサーフボードを捨てていたらきっと後悔すると思うんです。それに休日の朝、ジョギングじゃなくてサーフィンで身体を動かすってかっこいいじゃないですか。ミーハーな考えなのは分かっているけど、そういう生活に憧れる自分もいるんです」