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30歳目前だけど新卒の合同説明会に潜入「学生が聞きにくいことをアレコレ聞いてみた」

学び

不人気業界は種明かし的に事業を紹介

モザイクあり2

どちらかというと企業ブースより休憩スペースのほうが賑わっていた(※一部画像処理してます)

 なかでも印象に残った企業は、壁一面に企業のロゴが大きく掲げられ、赤を基調としたブースでとても目立っていた。だが気になって全体を見回しても何の企業かまったくわからない。そうこうしているうちに声をかけられ席に着くことになった。

 説明が始まると、土地管理を中心とした不動産事業をしているとのこと。安定した業績を重ねていることを強調し、ふむふむと10分程度聞いていたところ、突然、「このうえで高収益事業をしています。店舗型のパチンコ事業です」とスクリーンにパチンコ店の写真が映った。

 種明かしのようなまさかの展開に呆気にとられ、隣の大人しそうな女子学生は表情を強張らせていた。なるほど、何の事業か一切わからなかったのは不人気業界の人集めの手口だったのか

 売り手市場だと余計に苦戦が強いられる。学生へのアプローチ巧妙になっていたことがわかった

ネットで大炎上した某販売店は?

 とあるサービス業はどこかで聞き覚えがあると思ったら、以前ネットで炎上した企業であることを思い出した。

 あえて説明を聞いてみると担当者は「企業名で検索すると悲しい言葉も出てくるかもしれません」と自らその件に軽く触れていた。隠さない姿勢に多少の良心を感じたが、他の学生がいない隙にあくまでも就活生の目線で質問してみた。

「説明会で少し触れられていた件ですが、ネットで知っていました。その後、どのように改善されたんでしょうか」

 すると担当者は顔色を変えることなく丁寧に事情を説明し、「僕らもおごっていたところもあったんだと思います」と反省の意を口にすることもあった。

 内容の是非は一旦保留としても、いま聞いた事情は株主やユーザーに説明したが公にしていないという。学生からすると会社の悪評が放置されているのは決して良く思わないだろう。「誤解を解かなくていいんですか」と聞くと、

「いま利用している人に誤解を解けていればいいかな。ネット上で『改善しましたよ』と公表してもまた新しい議論に発展しちゃうかもしれないし」

 はて。今の顧客だけではなく、一企業なら社会全体の信頼を取り戻す必要があるのではないか? これには少々首をかしげたくなった。

先着のタクシーチケットはなくなっていた

 最後は「いろいろ不安だと思うけど、もし親御さんが心配されるようなことがあったら説明にあがるので」と言われた。近年は内定辞退防止のため親に会社理解を促すケースが増えているが、その対応はバッチリのようだ

 終了時間ぎりぎりまでブースを回り、5年ぶりの合説を十分味わえたが、先着のタクシーチケットがすでに配布終了していたことはとても悔やまれる。

 ただ話を聞いているだけなのに、就活はやはり身体に堪えた。後日、今回感じた違いを大学の同期複数人に聞いてみたところ、「タクシーチケットなんてバブル時代みたいだね」と同じように驚いていた。

 就活時の景気の良し悪しはただの運。この売り手市場が続けばどうなるのか。また覗きに行きたいところだが、次こそ本格的に見破られそうだ。

 また、この記事を読んだ就活生たちも私に倣ってとは言わないが、ぜひ聞きづらいことも積極的聞いて、就活を後悔のないように終えていただきたい限りである。

<取材・文・撮影/ツマミ具依>

企画や体験レポートを好むフリーライター。週1で歌舞伎町のバーに在籍。Twitter:@tsumami_gui_

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