30歳目前だけど新卒の合同説明会に潜入「学生が聞きにくいことをアレコレ聞いてみた」
閑散とする企業ブース……
各企業ブースは一部を除き閑散としていて、企業の人の元気な呼び込みが余計むなしく映った。一旦全ブースを回ってみると、人の出入りのタイミングはあるだろうが、150社中60社は学生数ゼロで、全体的に明らかに少なかった。
参加企業数は多くても、人気業界や有名企業が揃っているわけではなさそうだ。一部で、インターンシップの影響で説明会の価値が下がり、参加人数が減っているという報道もあったが、そのせいなのだろうか。
「4月だからじゃないですか? 3月はすごかったですよ。大抵の人は今は面接の時期みたいです」
さも同じ就活生を装って聞いてみると、メーカー志望だという女子学生はそう教えてくれた。その表情には少々就活の疲れも感じられた。「お互い頑張りましょう」と言って別れたが、こういったやりとりも懐かしい。
就活の現場で“働き方改革”は起きているか
変化を期待していたことがあった。就活生が聞きにくい労働環境についてだ。
働き方改革やパワハラ・セクハラなど、ここ数年で労働環境を問いただす機会は格段に増えた。意欲や成長といったマインドに終始しがちな新卒採用の場にも、現実的な視点が影響されているのではないだろうか。
だが期待は外れた。某飲食チェーン店は福利厚生や年間休日が書かれたスライドになると、バツが悪そうにすぐに次の説明へ移った。
某サービス業においては説明でまったく触れなかったので、「働きやすさの取り組みを教えてください」と質問したが、今後取得したいという「ホワイト企業認定マーク」や「くるみんマーク」(「子育てサポート企業」として厚生労働大臣の認定を受けた証)の説明をダラダラとされただけで、具体的な回答は返ってこなかった。
残念ながらこれらの様子は5年前と全くと言っていいほど変わっていない。あえていうなら、私が本物の就活生でないことを抜きにしても、働き方にまつわる日々のニュースに背中を押され、シビアな質問もしやすくなったと感じたことくらいだ。
一方で労働環境に自信のある企業は変わらずしっかり説明していた。特に某メーカーは説明がとても丁寧で、プレミアムフライデーの制度も紹介されていた。
お菓子を食べていると企業の人がやってきて……
一息つこうとして、休憩スペースに腰かけた。机の上をみるとなんとお菓子が置いてある。自由に食べていいようだ。
これも私のときには見たことなかった。人の家に上がったときのような歓迎ムードが伺える。疲労感からお菓子を口に運ぶ手が進んだ。
休憩をしていると、企業の人が「休憩中にごめんなさい。ちょっといいですか? 私たちは○○という会社でして~」と声をかけてくる。お菓子をほおばっていて休憩していても企業が勝手にやってくるのだ。なんか殿様にでもなった気分だ。
だが、そんな殿様気分もすぐに目が覚めた。ある若めの男性は「こんにちは~」と近寄り私の顔を軽く覗いてこう言った。
「あれ? きみ学生さん?」
「え!? はい……」
「なんか学生さんに見えなかった~」
バレた―――!! とっさに白を切ったが、内心ヒヤヒヤした。同時にショックだった。
いたたまれなくなりトイレに駆け込んで鏡と向き合う。えー? スーツ着て黒髪なんだけど、そんなに違う? お肌とかかな……と自分の姿をまじまじと見た。やはり無理があったようだ。