日本も他人ごとではない、移民大国フランスが直面する教育問題とは?
出来の悪い生徒なんて存在しない
――本作では「学習性無力感」というコンセプトが非常に熱く語られています。
ヴィダル監督:これはマーティン・セリグマンという心理学者が1960年代に発表した、「人は“何をしても無駄だ”という状況に陥ると無力感を学習してしまい、努力することをあきらめる」という説で、成功体験を積み重ねることの重要性を説いています。
事実、スポーツ界においては“子供に自信を与える”という考えがすでに根付いていますが、学校教育ではなぜか受け入れられていません。どちらかというと、教師のほうが子供の自信を打ち砕いてしまう……。
ですから、私が本作で語りたかったことは3つあります。第一に、子供に“自信”を与えること。第二に、子供に“学びの喜び”を教えること。勉強が好きな子供なんてそうそういません。だからこそ、“なぜこの教科を学ぶことが大切なのか?”、“なぜこの教科がおもしろいのか”ということを伝えることが必要です。
第三に、“出来の悪い生徒なんていない”ということ。生徒が学ばないのは9割がた教師のせいですが、そもそも、教授法を学ぶ機会が教師に与えられていないことも問題でしょうね。
子供たちの学習意欲や学力の低さは彼らの責任ではなく、大人たちの責任です。画一的な教育法では全ての生徒を救えない。それゆえに“教師の情熱”が一番大切なんです。
<取材・文/此花さくや 撮影/山田耕司>