アパレル企業なのに、配属先はなぜか居酒屋!? ブラックインターンの実態
劣悪な職場環境にインターン生の怒りが爆発
店長は「他の人と同じように、無給だよ」と言い放ったのです。危機感を覚えた石井さんは、時給を出してもらうよう交渉を始め、カフェやワインバーなど、他の店舗で働いていたインターン生にも連絡を取ってみます。
「他のインターンも無給に対しては不満を口にしたものの、『選考を優位にするためなら、仕方がない』と、条件を飲んでいました。きっと他の店舗は仕事が比較的楽なのだと思いました。それに比べて、居酒屋はヒドかった。雑用の多さはもちろんですが、厨房のチーフが短気で、他のスタッフを怒鳴り散らしていたのです」
そのためバイトを辞める厨房スタッフが続出し、石井さんは「次のスタッフが見つかるまでだから」という条件で厨房作業も手伝わされたそうです。
怒鳴り散らすチーフに、最初は我慢をしていましたが、ある日、腹が立って「うるせえ!」と怒鳴り返してしまいます。石井さんは「お前が怒鳴ってばかりいるから、暗い厨房になって、みんな辞めてしまうんだよ!」と思い切ってチーフに言ったそうです。
「あと半年やれば、選考が有利になる」の提案に…
そこから石井さんは決死の覚悟で「楽しく働いてこそ、いいものができる、お客も喜ぶ」と訴えたそうです。そこからなんと、奇跡的なことに、現場の雰囲気が徐々に改善していきました。
「半年間のインターンが終わってから、僕は本社に呼び出されました。成績はインターンの中でトップだと褒められ、『あと半年やれば、選考が有利になる』と言われました。でも、最後まで続けたのは途中で投げ出したくなかったからと、選考をきっぱり辞退しました」
憧れのアパレル業界で、しかも大好きなブランドデザインが多い会社でも、石井さんは後悔していないそうです。
「学生に“内定”というニンジン(エサ)をぶら下げて、無給で働かせる企業の内実はブラックか、あるいは将来ブラックになる要素が含んでいると思いました。それにアパレルブランドならほかにもいくらでもあります」
その後、石井さんは就活で海外展開に力を入れている別のアパレル会社に入社。当初思い描いていた仕事内容とは違いますが、今は新しい希望を抱いているそうです。
<TEXT/夏目かをる 取材協力/矢加部英達 イラスト/Yopsymi(@Yopsymi)>