明石前市長暴言、行政による“地上げ”の難しさを不動産業界人が語る
交渉はツラいよ、住民にもそれぞれ事情が
行政側に事情があるように、立ち退きを拒む住人側にもさまざまな事情があると、かずお君は打ち明けます。
「所有者にも懐事情がありますし、家族もあります。そこで長年商売をやっていたかもしれません。おばあちゃんが『どうしてもこの家で死にたい』って言ってるのかもしれません。全員が全員スムーズに動けるわけではないんです」
リチャードホールさんは、「先祖伝来の土地ともなればさらに厄介」だといいます。
「厄介なのは、都市計画道路として設定される前から土地建物を所有している人です。所有者からしたら『何勝手に設定しとるねん! しばくぞ』と思うでしょう。そんな人たちに頭下げて『売ってください』と交渉するのは、ツラいと思います」
立ち退きを拒む住民に対して、ともすれば「公共の利益に反する行為では」と捉えがちですが、かずお君は「だからといって、今そこに住んでいる人が不幸を強要される理由にはならない」と断言します。
「閑静な住宅街が気に入ってそこに住んでいたのに、太い道路が家の目の前を通ることになったら、その人は必死の抵抗をするでしょう。
もちろん、道路が広くなったほうがみんなが便利で幸せになりますが、だからといって土地所有者に苦境を甘んじて受けいれろというのは筋違いです。丁寧な対応と時間が必要なんです。だから道路拡幅工事が事業認可後、10年以上経つことはよくあります」(かずお君)
複数の関係者といかに調整を行っていくのか。道路行政の難しさが凝縮しているといえます。
全宅ツイが語る、地上げエピソード
さまざまな困難が立ちはだかる行政による土地収用。では、民間業者が地上げをする場合はどうなのでしょうか。お二人に訪ねました。
「取引先の法人から『事務所建替えるから隣6軒地上げして』と頼まれたことがあります。毎週、菓子折り持参で『おはようございます!』って2年くらい絶叫し続けてました。時に肩を揉んだり、繰り返される意味不明な話を聞いたり。一緒に映画見に行って、サイゼリヤ食いながらニコニコして」(リチャードホール)
ただ、「下手に人間関係作ると出て行ってもらうの大変なので、あくまでビジネスとして接するのが鉄則です」と、リチャードホールさんは言います。
「行政と違って予算は潤沢にあったので、最後はお金で決着しました。大変でしたが、買主からいっぱい手数料もらって、御礼にいっぱい売却専任もらいました」