ブラック企業から、高待遇の会社に転職するための戦略
もし今、あなたが勤めている会社がブラック企業だったら……当然、すぐにでもホワイト企業に転職し、現状を変えたいと思うでしょう。とはいえ、スキルや実績がなければ、なかなか条件のいい会社に転職するのは難しい。
そんな悩みに対し「ブラック企業にいても落ち込む必要はありません」と語るのは、ライフプロデューサーの矢加部英達さん。
大手人材派遣会社で18年間勤務し、独立後は延べ2500人の転職をサポートした実績をもとに、働く人のさまざまなエピソードを持つ矢加部さんが、あるブラック企業に勤める営業マンの例を挙げてくれました。
自分の会社をブラック企業だと思わない人たち
ブラック企業から、高給待遇で転職するための戦略とは何でしょう。
「ある中堅どころの人材派遣会社営業部勤務の加藤健一さん(仮名、29歳)は、長時間労働のブラック企業だとわかると、すぐに転職を考えます。ところがご多分に漏れず、スキルも実績もない若手社員が、条件の良い企業に転職するのも難しい」
加藤さんは毎日9時半出社に、23時退社。管理者がタイムカードを20時帰社に押し直すのは、周知のこと。外回りをしてから帰社すると18時、それから事務処理にアポ取りと平日は休む暇もなく、土曜日出勤も当たり前。
長時間労働の典型的なブラック企業で生き抜くために、加藤さんはほかのブラック企業にいる人たちの実態を調査します。まずは異業種で世間的にブラックと呼ばれている企業に勤める友人に会うことに。1人は広告代理店、もう一人はWeb制作会社でした。
「加藤さんは、2人が自分の会社をブラックだと思っていないのに、ビックリしたそうです。理由は、好きなことをやっているとか、感謝されているとか。つまりやりがいがあるから、ブラックでも仕事が楽しくなるんですね」
ブラック企業を生き延びるための裏ワザ
そこで、加藤さんは“やりがい”をみつけるために、人材を紹介した企業に挨拶を兼ねたメールを出したところ、半分以上が喜んでいることがわかったのです。
「なかには、さらに紹介してほしいというリクエストのお客さんや、別部署でも探してほしいなど、仕事に直結することが増えて。ひょっとしたら、ここでも道は開けるんしゃないかって」
さらに加藤さんは、同じ部署の先輩から、ブラック企業で生き延びるための裏技も教えてもらったのです。
「加藤さんの会社は打ち合わせ時の経費がほとんど使えません。お客さんとの面談をやむなく外で行なう場合は、ドトールやベローチェなどの安いコーヒーチェーン店のみ。スタバやタリーズなど、1杯300円以上かかるお店はNGでした」
そこで、交通費精算でやりくりすることを先輩から伝授されたそうです。
「例えばクライアントの本社が小田原、支社が都内にあった場合、都内の支社に行くと言って本社までの交通経費を請求するんです。セコイと言われても、1回につき、2000円以上もねん出できるので、外回り時のコーヒー代や、休日出勤の弁当代にできたそうです」