元歌舞伎役者の45歳書店員が語る、コロナ禍での「銀座 蔦屋書店」の日々
東京のGINZA SIXにある書店「銀座 蔦屋書店」。店舗のテーマは「アートと日本文化」で店内では企画展がされているほか、多くの作品が並び、アートに関わる書籍や雑貨なども溢れています。アートと人を繋いでいく新たな場所としても注目を集めていますが、2020年から続くコロナ禍でも業績好調を維持し、数字としての結果も出しています。一体どのような取り組みをしてきたのでしょうか。
元歌舞伎役者という経歴を持ちながら「日本文化コンシェルジュ」として銀座 蔦屋書店の売り場に立ち、現在は店内の展示にも携わっている佐藤昇一さん(45歳・@Chosan1976)。記事前編では佐藤さんのこれまでのキャリアについて、後編ではコロナ禍での銀座 蔦屋書店の取り組みや、今後の展望について話を聞きます。
日本文化の担当からスタート
――「日本文化コンシェルジュ」として銀座 蔦屋書店に入社した佐藤さんですが、どんな内容の仕事をしているのでしょうか。
佐藤昇一(以下、佐藤):日本文化コンシェルジュとしての仕事のひとつは書店員としての基本業務です。あとはフェアとして、テーマに沿った本や雑貨を並べて、棚を作ることですね。ひとつひとつの企画を店内に作っていく、という感じです。
――なるほど。佐藤さんは現在、店内での展示についての仕事を担当しているそうですが、きっかけを教えてください。
佐藤:日本文化とトラベルのジャンル担当をしていた時は、フェアを企画するのがメインの仕事でした。大きく変わったのは仏像コーナーの設置に携わってからですね。仏像という美術品をあつかったことがきっかけで、「日本文化がわかるから佐藤さんやってくれないか」と作家さんと美術品に関する業務を任されるようになり、2021年4月に作品展示に携わる部署に異動しました。
「意外と向いている」と気づいた瞬間
――展示に携わるようになって気づいたことなどはありますか?
佐藤:今こうして作家さんと向き合うようになって、一人ひとりが持つひとつひとつが「他にないものになりたい」という才能であることに気づきました。もしかしたらそれは「変わったものになりたい」だけかもしれない。でも、彼らは命をかけてものを作っている人たちなんです。そんな人たちと向き合う作業というのは、自分が歌舞伎の世界にいた時の師匠との付き合い方と似ていると感じています。
師匠も作家さんたちも、1つの作品を作ろうと命をかけている。そういった気迫を持っている方々なのでリスペクトは当然感じますし、作家としての強いこだわりがすべての根拠になるので、共感しながら、信頼して一緒にお仕事することができる。作家さんと接してみて、意外と自分に向いているかもしれないと気づきました。