豊作だった「2021年の邦画」4選。役所広司、長澤まさみら熱演の傑作も
『エヴァンゲリオン』や実写版『るろうに剣心』シリーズが完結を迎え、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』と『偶然と想像』が世界三大映画祭で重要なタイトルを受賞した2021年、国内外で多くの人の感情を動かした日本映画豊作の年だった。
映画館で見逃したあれやこれやの映画たちは、年末年始に一気にさらってしまおう。本記事では多数の媒体で映画やドラマ、YouTubeの記事を執筆する筆者がAmazonプライム・ビデオでレンタルできる2021年公開の日本映画を、厳選して4本レコメンドします。
1)『すばらしき世界』:刑期を終えたヤクザが向かう先は…
前作の『永い言い訳』(2016)で現代的な(擬似)家族映画を提示してくれた西川美和監督の最新作が『すばらしき世界』。あれから早5年、西川監督がひとつの映画をつくりあげる時間と労力の長さには毎回驚かされるが、紡がれる物語の強度の強さは、膨大なリサーチと取材の賜物だろう。
佐木隆三の小説『身分帳』が原作の本作は、過去に殺人を犯したヤクザの主人公・三上(役所広司)が、13年の刑期を終えてシャバに戻ってくるところから物語が始まる。
奇しくも2021年の冬には、ヤクザの生存権が消えかけたこの時代になんとかカタギとして生きていく男を描く『ヤクザと家族 The Family』(藤井道人監督、綾野剛主演)という共時性の高い映画もあった。
役者の存在感がたまらない!
しかし作劇のアプローチとして『ヤクザと家族』がどこまでも家族や血縁に縛られた人間関係を描いていたのに比べて、わかり合えない他者との、それでも理解しようと試みる相互ケアのコミュニケーションを描いていた本作のほうが1枚上手だったとイチオシしたい。
役所広司の哀愁や、仲野太賀の無邪気さ、長澤まさみの不謹慎さなど、役者の存在感がたまらない『すばらしき世界』。
さて、“すばらしき世界”とは一体なんなのか。不器用で衝動的で、それでも現代社会に順応しようとした三上の生き様を見ると、すばらしくない不寛容な世界に疑問を抱くはずだ。