硬直化した「日本型ボーナス」は廃止へ。若手が賃金アップしない一因にも
コロナ禍で業績が悪化、一向に回復しない企業は今冬のボーナスも“厳冬回答”が多い。一方で、業績が落ち込んでも前年と同額、微減で歯を食いしばる企業も。三菱UFJリサーチ&コンサルティングが11月10日に発表した調査では、1人あたり支給平均額は前年比0.1%減の38万254円となった。
時代遅れな日本のボーナス制度に対して経済評論家の加谷珪一氏が提言する(以下、加谷氏寄稿)。
年功序列から生まれた「日本型ボーナス」
ボーナスは日本と諸外国で性質が異なります。もともとボーナスは、会社の業績や個人の成果に応じて払うというニュアンスが強く、良い成績を上げた人に還元することで他社からの引き抜きを防止する役割と、一方で基本給を抑え、能力がない人への過払いを防ぐ役割もあります。
つまり、転職が活発で、適材適所が行われることが前提の社会で発達した報酬体系で、諸外国のボーナスもこれに近い。
しかし、年功序列が特徴の日本型雇用において、ボーナスは個人の成績で大きな差はなく、年次でほぼ一律に支給されるため事実上は生活基本給の一部という性質を帯びています。
雇用の流動性を低下させる要因に
労働組合も「○か月分」という横並び的な交渉しかしないため、ボーナスは硬直化しています。日本型雇用と密接に関わっている日本のボーナス制度は個人の独自性、創造性、生産性が問われるような現代において時代遅れの感が否めません。
また一律のボーナス制度は雇用の流動化の低下と雇用の過剰に関係しており、イノベーションなどを阻害していると言えます。
例えば日本型ボーナスだと同じ仕事をしても大企業ほど高く、中小企業だと少なくなるので、収入に大きな差がつきます。当然、大企業にいる人は、絶対にこの待遇を逃したくない。それが雇用の流動性を低下させています。社会全体の人材流動性が乏しいと新事業に必要とされる人的リソースが集まりにくくなるため、社会最適化を阻害しているとも言えます。