秋こそ日本酒でしっぽり!お酒のソムリエが推薦、季節限定の3品
最近は居酒屋などの時短営業で、自宅でお酒を飲む人が増えているといいます。そんなときコンビニやスーパーでおなじみのお酒を購入するのもよいですが、せっかくなら期間限定、季節限定の逸品を味わいたいですよね。
実は、日本酒にも、ボジョレー・ヌーヴォーのような季節限定発売の商品があります。いつものお酒に飽きた人、これから日本酒を楽しんでみたいと考えている人、チェックしてみる価値があるはずです。お酒のソムリエ・友田晶子が「ひやおろし」の魅力とお勧めの3本を紹介します。
季節限定の日本酒「ひやおろし」とは?
商品名は「ひやおろし」。「ひや」と付くので冷酒のことかと思う人もいるかもしれないが、そうではない。いわゆる日本酒製造における手法の名前です。
通常、日本酒は秋に収穫した米を醸造し、冬から春にかけて「新酒」を生み出します。「新酒」ができると、殺菌やこれ以上余計な発酵を起こさないよう「火入れ」をし、瓶詰めして出荷となるのですが、「ひやおろし」は、「火入れ」したあと、そのまま蔵内で寝かせます。
春から夏にかけて暑く季節でも、蔵の中はひんやり涼しく、お酒にとって心地いい環境。そこに置くことによって、粗く堅い味わいだった新酒(それがひとつの魅力でもありますが)にまろやかさが生まれ、落ち着きが出て、旨味やコクがのってくるのです。
そして、蔵と外の温度が同じくらいになった秋ごろ、冷えた状態の酒を、そのまま瓶詰めし、出荷します。冷えたお酒を瓶詰めして卸すので、業界用語で「ひやおろし」と呼ぶのです。この製法で造られたお酒にはボトルに「ひやおろし」とシールが貼られるというわけですね。
秋の味覚と抜群の相性!
日本酒通は「ひやおろし」と書かれたラベルや、飲食店で「ひやおろし、はいりました」のメニューを見ると、ああ、もう秋か、今年もこの季節が来たか、と思います。まさに日本酒業界の季節の風物詩ともいえますが、ワインのボジョレー・ヌーヴォーと違うのは、解禁日がないことです。
9月初めの重陽の節句を解禁日にしてはどうかという提案もありますが、ここは、日本全国では微妙に気候が違い、出荷時期に差が出ることや、できるだけ早く市場に出したいといったメーカー各社の思惑があり、一斉に解禁日とはいかないのです。
ボジョレー・ヌーヴォーの成功から鑑みれば、真似すべきという声も多いのですが、日本酒業界は難しいものがあるとか。それでも、旨味、コク、深みが備わった「ひやおろし」の味わいは何をおいてももう格別。冷たくして飲んでもおいしいし、とくに、ぬる燗や熱燗で本領発揮することは知っていおいてほしいです。
そして、秋の味覚、脂ののったサンマや戻り鰹、秋鮭などの魚や、滋味深いキノコ料理、そろそろ恋しくなる鍋料理など秋から冬にかけての食材や料理との相性が抜群。秋限定、秋ならではの日本酒があることは知っておいて損はないと思います。ここで筆者のお勧め「ひやおろし」の具体的な銘柄をいくつか挙げていきたいと思います。