コロナ禍でも増益の「ヤマダ電機」強気な出店攻勢の背景
新型コロナウイルス感染について最初に報じられてから約1年が経過しました。家で過ごす「巣ごもり消費」が増えた結果、業績が好調な企業とそうでない企業の明暗が出ています。
なかでも日本最大手の家電量販店チェーン「ヤマダ電機」は郊外への積極的な出店攻勢が見られました。本連載「ブラック企業アラート」では、「ヤマダ電機」の出店攻勢の考察を足掛かりに、その姿を分析します。
ヤマダ電機の連結業績推移
まず、ヤマダ電機の連結業績推移を確認し、グラフにしました。ヤマダ電機の場合、売上額とその他の利益額に10倍以上の違いがあるので、変化が見やすいよう、売上額のみ右軸とし、その他の利益(営業利益・経常利益・当期純利益)を左軸としています。また、2021年3月期については「第3四半期(2020年12月末)」までの値である点に注意してください。
売上額については、2011年3月期までは右肩上がりで伸ばしていたものの、東日本大震災発生後の2012年3月期に落ち込み、それ以降2011年3月期の水準まで戻せていない状態です。
利益額についてもおおむね同様の推移ですが、特筆すべきは2021年3月期の値でしょう。先述の通り、2021年3月期は「9か月分」の値をグラフに示しているのですが、2020年3月期(12か月分)よりも高い利益額となっています。
これは2021年3月期第3四半期の決算短信にて「①家電、家具、生活雑貨、住宅関連商品等、他社にない幅広のSPA商品拡充による利益貢献、②支社長制度による地域別のきめ細かい経営による売上高の最大化および競争力強化ならびにコスト低減、③都市型店舗の市場・商圏に合わせた売場構成の最適化、④リアル店舗の強みを活かした当社独自のEコマース事業等による成果です」と説明されている通り、需要の変化をとらえた企業努力の結果によるものと言えるでしょう。
もっとも、2020年4~12月期はヤマダ電機を含む家電量販店大手4社が増益。巣ごもりやテレワークで、家電の販売全体が好調なのです。
なぜ郊外に出店攻勢をかけるのか?
続いて、郊外に出店攻勢をかける理由について考察を進めます。ヤマダ電機の場合、ヤマダ電機単体の「面積別店舗数推移」のデータが存在していたため、こちらを用いました。
2015年3月→9月の間に「688店舗→642店舗」と大幅な閉店をして以降、店舗数全体はほぼ横ばいで推移していたため、今回の「出店攻勢」への切り替えは大きな判断であると言えそうです。
また、面積別の推移を見ると、3,000平方メートル以上の大型店の比率が最も多く、ヤマダ電機が郊外を基盤にしていることが数値の面からもわかります。大まかに、都市部のほうがテナント契約・地価の面から店舗面積が狭くなる傾向にあり、「大型店が多い=郊外店が多い」と判断できます。
したがって、今回の出店攻勢についても「直近の市況の追い風を受けて、得意分野(郊外の大型店)で勝負をかけようとしている」と判断することができ、妥当な判断であると言えそうです。