視聴率20%超大河ドラマ『青天を衝け』で話題、渋沢栄一の知られざる人物像
大河ドラマ『青天を衝け』は、初回の平均視聴率が8年ぶりに20.0%と大台に乗ったことが話題になっている(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。主人公は、次期1万円札の肖像画に決定しており、「日本近代資本主義の父」として名高い渋沢栄一だ。
渋沢の功績は、第一銀行(現在のみずほ銀行の前身)や王子製紙など生涯で約500の企業に携わり、資本主義を日本に定着させたと語られることが多い。今回は、そんな渋沢の功績を分析してみたい。
先進的だった道徳経済合一説
渋沢は、自身の理念として「道徳経済合一説」を唱えていた。その内容を一言でまとめると、「経済と道徳は同じものである。つまり、商売をするときには道徳が必要だし、道徳を貫くためにも商売が必要だ」というもの。
現代を生きる我々の感覚からすると、ずいぶん当たり前の理想を言っているようにも思える。しかし、渋沢が生きた時代の背景を踏まえると、この主張の斬新さがよくわかる。
そもそも、渋沢は幕末に生まれた人間だ。江戸時代といえば、ご存知のように「武士」と「儒教」の時代。商売で財をなすものもいたが、富をたくわえていても「格式」という点で武士にはとうてい太刀打ちできなかった。武士身分を買うことはできたが、商人はつねに軽んじられていたといってよい。
軽んじられていた商人の立場が向上
そんな「士高商低」ともいえる価値観は、明治維新後も変わらなかった。なぜなら、政権の中枢にいたのは「武士」出身の政治家であり、商人ではなかったからだ。「士高商低」がそのまま「官高民低」に変わっただけだ。
これを改革すべく、商人の渋沢は立ち上がった。資本主義どころか士農工商の身分制度が色濃く残った社会を変革すべく、あえて儒教的かつ武士が大切にしていた「道徳」の価値観を商売の世界へ持ち込んだ。
こうして、政治家たちが抱いていた商売に対する嫌悪感を和らげ、同時に商人たちが営利だけを追求しないよう注意喚起をしていたのだと近年では考えられている。