日本は完敗、中国の「最先端キャッシュレス」事情。米国が恐れる理由
世界では今、貿易、金融、ITの分野で米国と中国の対立が激化しています。米国トランプ政権は全米に1億人のユーザーがいる動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国事業売却を命令。中国最大のSNSアプリ「ウィーチャット」を運営するテンセント社とアメリカ人の取引を禁止する行政命令にも署名しました。
その背景にあるのは、「間違いなく世界一、発展している中国のキャッシュレス化に対する米国の苛立ちと焦りがある」と語るのは最近、新書『米中金融戦争 香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社新書)を上梓した金融アナリストの戸田裕大氏です。
中国のキャッシュレス経済は世界最先端
人口14億人のキャッシュレス大国・中国では、「仕付宝(zhi-fu-bao)」と「微信(wei-xin)」という2つの決済機能を持ったアプリの2大巨頭が君臨し、中国のみならず世界中で利用されています。日本では、それぞれ「アリペイ(Alipay)」「ウィーチャット(Wechat)」と呼ばれています。
「例えば、私が中国の上海から東南アジアに近い広州に出張に出かけるとき、財布を持っていかないこともあります。航空券および鉄道券の予約と支払い、ホテルの予約と支払い、コンビニエンスストアでの支払い、食事の精算・割り勘など、すべてこれらのアプリで行うことができるからです。中国では財布を持っているよりも、携帯電話と充電器を持っている方が重要なのです」
こう語るのは、コロナ禍前までは、為替のコンサルティングビジネスで中国全土を飛び回っていた戸田氏。キャッシュレス化の普及は、なにも北京、上海、広州といった大都市に限りません。最近、人権問題で世界的な注目を集める「新疆ウイグル自治区」などでもそれは同じ。
「ザクロや和田玉(緑色の石)、羊の串焼きなどが地元のお店の露天で売られているのですが、これらの決済も携帯電話とアプリで行います。移動のタクシーも、もちろんタクシーアプリで呼び、決済は自動で行われます」(戸田氏、以下同)と、中国全土にあまねく普及しているのです。
コロナで「IT後進国ぶり」が明らかに
今回の新型コロナ感染症対策では、中国や韓国、台湾がIT技術を駆使して感染封じ込めに成功したのに比べ、いまだ保健所での超アナログな対応に終始する日本の「IT後進国ぶり」が明らかになりました。
9月に菅義偉内閣が発足し、早速、目玉の政策として、デジタル庁が新設されることになりました。
「日本の行政・郵便手続きが非合理的で、中国とは差をつけられていることを痛感しているのは、他でもない日本政府ということだと思います。それは、世界一のコロナ感染国・アメリカも同様。だからこそ、中国IT企業への締め付けが厳しくなっているという側面もあると思われます」