居酒屋「塚田農場」が食堂をオープン。コロナ禍で飲み方も変化
コロナ禍で飲食店の倒産が相次ぎ、飲食業界は厳しい状況に置かれている。休業や営業時間短縮の要請を独自に打ち出す自治体も出てきており、今後さらに逆風となることが予想される。
そんな中、テイクアウトやデリバリーに対応したり、ECサイトで食材を販売したりと新たな飲食店ビジネスに活路を見出す企業もある。
今回は、居酒屋「塚田農場」で知られる株式会社エー・ピーカンパニー(以下、APC)執行役員 ブランド開発室室長の横澤将司氏に、これからの飲食店ビジネスのあり方や新しい業態を始めた理由を聞いた。
流通量1%の地鶏を手の届く価格で
APCは、国内外合わせて30業態以上、約200店舗を展開する大手外食企業だ。なかでも塚田農場は同社の主力業態であり、経営を支える屋台骨と言っても過言ではないだろう。
「社長である米山(久)が飲食ビジネスで起業してまもない頃、ありふれたものでない外食の形を模索していた時に出会ったのが、宮崎県のみやざき地頭鶏(じとっこ)でした。とある行きつけの居酒屋で出された地鶏料理の美味しさに感銘を受け、米山の店でも実際に使ってみるのですが、その原価の高さに驚くことになります。これを機に、納品のダンボールに書かれた“宮崎”を手がかりに現地へ足を運んだのです」
みやざき地頭鶏の生産者のもとをひたすら巡って交渉したことで、直接仕入れるルートを確保。養鶏場を自社で持つことで中間マージンをカットできるので、2006年には自社の養鶏場からみやざき地頭鶏を店舗へ直接できる仕組みを整えた。
「2007年に八王子に1号店を出して以来、みやざき地頭鶏は当社の主要食材になっていますね。鶏肉は大別するとブロイラー、銘柄鶏、地鶏に分けられ、このうち、国内に流通している鶏肉の割合の99%がブロイラーと銘柄鶏で占められます。残り1%が地鶏であり、塚田農場ができる前まではお金持ちやお酒好き、グルメな人にしか知られていませんでした」
貴重な地鶏を半値近くで味わえる
従来は客単価6000~8000円かかるお店で出すのが当たり前だった地鶏を、生販直結モデルを確立したことで半値近くに抑えた。これが、塚田農場の人気を呼ぶきっかけとなり、同時に地鶏の知名度向上に貢献したのだ。
「ただ産直で食材を仕入れるだけでなく、養鶏場という畜産業に本腰を入れたことで、宮崎県日南市の地場産業に貢献したい。そういった想いから、当時の料理長を現地に住まわせて、契約農家との関係性を築く努力もしてきました。地鶏の飼育期間に関しても、ブロイラーの2~3倍である雄120日、雌150日をかけて出荷する独自の基準を設けています」
食品の生産から流通、販売まで全て手がける「六次産業化」がAPCの強みであり、塚田農場を成功事例に、2011年からは漁師直結型の鮮魚専門居酒屋「四十八漁場」を展開。
「鶏肉」の次は「魚」と、生販直結モデルを横展開することで順調に業態・店舗数を増やしていき、2012年9月には東証マザーズ、2013年9月には東証一部へと上場を果たした。