Spotify、Appleとは一線を画す、個性派「定額制音楽サービス」に注目
日本でも本格的に普及しつつある、定額制の音楽ストリーミングサービス。「ストリーミング オススメ」と検索してみると、各サービスの特徴をわかりやすく表にして解説したサイトがいくつもヒットします。
しかし、そこで比較されている「Apple Music」「Spotify」「Amazon Music Unlimited」「Google Play Music」「AWA」「Line Music」といった大手ストリーミングサービスは、月額料金・楽曲数・音質の3点について見ればほぼ横並び状態。
正直なところ、どれに入っても大差がないというのが現状です(だからこそアプリの使い勝手や、どんな曲が聴けるかといった違いを慎重に比べる必要があるのですが)。
ここではそういった比較記事ではスルーされがちな、既存サービスとは異なる1点突破の個性派ストリーミングサービスを2つ紹介。いずれも日本国内でも楽しめるサービスですよ!
(1) 「Deezer HiFi」CDと同じ音質が楽しめる
まずは、昨年末に日本上陸を果たした「Deezer HiFi(ディーザー・ハイファイ)」。フランスに拠点を置くDeezerが展開するサービスで、世界的に見ると先に挙げた「Spotify」、「Apple Music」、「Amazon Music Unlimited」、そして中国の「QQ Music」に次ぐシェアを誇っています。
Deezer HiFiの特徴はズバリ「音質」。既存のストリーミングサービスが256kbpsや320kpsといった圧縮音源を配信しているのに対して、Deezer HiFiは1411kbpsのロスレス音源の配信を基本としています。
これはCDに収録することができる44.1kHz/16ビットというスペックと同等で、理屈の上ではCDとまったく同じ音をストリーミングで聴取できることになります。
つまり、いまだにCDがそれなりに売れる“CD鎖国”の日本にとって、Deezer HiFiは“黒船来航”に等しいインパクトを持つサービスなのです。
月額料金は1960円。既存サービスの多くがデフォルトとする980円のちょうど2倍ということでやや割高に思ますが、単純に数値だけを見るなら音質は320kpsの圧縮音源の3倍以上あるし、国内盤CD1枚の価格よりもずっと安いですね。
いま利用しているストリーミングサービスに音質的な不満がある、もっといい音で聴きたいという人にとっては現在の日本でオンリーワンの選択肢と言っていいでしょう。
音質のよさは“一聴瞭然”。圧縮音源系のストリーミングサービスと同じ曲をDeezer HiFiで聴くと、解像度の高さや見通しのよさが際立って感じられます。
実はCDクォリティのロスレス・ストリーミングサービスは、Deezer HiFiだけではありません。日本にはいまだサービスインしていませんが、アメリカの「TIDAL(タイダル)」やフランスの「Qobuz(クーバズ)」ではCDクォリティを基本に、現在はハイレゾ音源(CDの数倍の情報量を誇るハイ・レゾリューション音源)のストリーミングも実現させたりしています。
一部のマニア(筆者も含む)はこれらのサービスにいろんな手を使って自己責任で入会。数年前から密かにロスレス・ストリーミングサービスを楽しんでいたわけですが、日本未上陸ということで国内アーティストの楽曲がほとんど含まれていないのが大きなネックでした。
正式に日本にサービスインしているDeezer HiFiのメリットはここにもあって、新譜・旧譜、新人・ベテランを問わず、幅広い日本人アーティストの楽曲をアルバム1枚分よりも安い月額で聴きまくることができるのです。
ただし、Deezer HiFiには現状いくつかのエクスキューズがあり、それが一般的な普及に至っていない大きな理由となっています。ひとつはロスレス再生が、PCもしくはDeezer HiFi対応オーディオ機器での再生に限られている点。つまり、スマートホンやタブレットで聴く際には既存サービスと同じく最大320kpsの圧縮音源再生となって、Deezer HiFiならではの高音質は活かされない(端末にダウンロードして聴くオフライン再生も同様)のです。
もうひとつは、アプリの使い勝手。たとえばSpotifyは検索ワードに紐づく関連アーティストや、ユーザーのリスニング傾向から導き出される「おすすめプレイリスト」の精度が驚くほど高いのですが、Deezer HiFiのそれにはまだまだ洗練の余地が残されています。
とはいえ、PCにヘッドホンアンプを組み合わせたり、パイオニアのポータブルプレーヤー「XDP-20」やヤマハのネットワークプレーヤー「CD-NT670」といった対応機器を使って聴くDeezer HiFiは、それらを十分に補うほどの快音です。
外出時はスマホの圧縮音源でガマンするにしても、自宅では2本のスピーカーと向き合ってしっかり音楽を聴きたいという能動的なリスナーなら選ばない手はありません。