20代男子・特殊清掃人が「孤独死現場」で見たもの
突然の病気や事故など、さまざまな理由で孤独死を迎えた人びとの部屋を片付ける特殊清掃という仕事。
家主のなきあと、遺体から流れ出た体液を処理し、鼻を刺すほどの死臭に耐えながらも、今なお意思が残る遺品を仕分ける作業は、ときに過酷さをきわめます。
その前線に立つスタッフは、どのような思いから今の業界へと足をふみ入れたのか。前回のインタビューでは東京・大田区を拠点に特殊清掃を手がける、ブルークリーン株式会社で働く、元・六本木ホステス嬢の36歳女性に話を聞きました。
今回は、20歳から美容師として2年半働いたのち、半年ほど水回りを中心とした住宅設備関係の会社で従事し、その後、今年2月から特殊清掃の仕事に就いた伊豆照輝さん(23歳)に話を聞きました。
「ゴミ屋敷に入ってみたかった」
最初に今の仕事に就いたきっかけを聞くと、伊豆さんは「現場責任者の鈴木(亮太)さんがYouTubeで配信している『すーさんTV』でした」と語ります。
「住宅設備関係の仕事を辞めてから1か月半ほどの間にたまたまニュースで見た“ゴミ屋敷”の話題が気になり、そこから動画へたどり着き、現場の裏話などを聞いているうちに『こんな面白い人の下で働いてみたい』という気持ちが強くなって。メールしたあとに面接へ進み、働き始めることになりました」
見知らぬゴミ屋敷に入ってみたかったのも、きっかけだったらしく、初めて携わった現場は「生前整理でした」と振り返ります。
「初めの現場は、故人ではなくまだご存命の方の生前整理を手伝う仕事でした。見知らぬ家の引き出しを開けるのは、友だちの家でもやるはずのないことだし、初体験だったので新鮮でしたね。その後、特殊清掃の現場へ関わり始めたのもわりと早かったです」
現場でひとつずつ覚えていった
「現場の状況におののくことはなく、死臭がきついとも、あらかじめ聞いていたので、美容師の仕事で薬品のニオイを嗅いでいた自分には抵抗もありませんでした」
この数か月でこなした現場の数は20~30件ほどで、作業自体は「誰かを見て学ぶのではなく、初めから現場でひとつずつ覚えていきました」と言います。