ひろゆきが語るメディアの未来「テレビが本気出したら、ネットは勝てない」
「2ちゃんねる」の創設後、「ニコニコ動画」を開始、そして現在は英語圏の画像掲示板群「4chan」の管理人を務める“ひろゆき”こと、西村博之氏。
日本のネット史を語る上で欠かせない彼が、先日上梓したのが『自分は自分、バカはバカ。 他人に振り回されない一人勝ちメンタル術』だ。
いまやビジネス本で数多くのベストセラーを生み出す、彼が考えるサラリーマンの理想的な働き方とは? 日本に一時帰国中のひろゆき氏に、元号が平成から令和になったまさにその日にインタビューを実施した。前編に引き続き、今回はひろゆき氏の生い立ちに迫る。
目次
ひろゆきが、怒られ続けた赤羽時代
――ひろゆきさんの幼少期ってどんな感じだったのでしょうか。
ひろゆき:子供って割と自分で勝手にやって失敗したりするじゃないですか。そこでうまく行かないから修正するって流れなんですけど、たぶん僕、修正をしないまま、なんとか来れてしまったんですよね。
小学校って集団登校あったじゃないですか。僕が住んでた団地は、小6男子が僕だけだったので本来、集団登校を率いるはずだったんですけど、朝起きれないので、その記憶がない。直らない、直さないまま大人になって、そのルールで生きていても特に困らない。
――怒られたりしませんでした?
ひろゆき:小学校の時は毎日のように先生に怒られてました。怒られずに家に帰った日が1日もないくらい(笑)。何で怒られ続けたかというと、たぶん僕が直さないから。よく忘れ物して立たされてたんですけど、忘れ物をしないようにするのが、無理なんです。
――その生き方って大変じゃないですか。
ひろゆき:学校の先生に毎日、怒られてたので、「怒られる、嫌われるのが普通」だと思ってたんですよ。だから「嫌われたくない」と考える人の気持が逆によくわからなくて「え、それ普通じゃないの?」って。
ひろゆきを生み出した街・赤羽の多様性
――新刊ではメンタルについて書かれてますが、怒られても気にしない生き方に憧れる人も多いと思います。今の若者は同調圧力や他人の目を非常に気にしているので。
ひろゆき:若い人が気にする「みんなに合わせる」って、お金に関わることが多いと思うんですよね。みんなが旅行に行くので、「私も行きたい!」みたいな。僕はそういうのに対して、ずっと「お金ないからできません」コースを歩んできたんですよ。
――どういうことでしょうか。
ひろゆき:僕、子供の頃お小遣いもらっていなかったので、みんなが「買い食いするぞ」ってとき、お金ないんですよ。それで「くれよ」って言うと、けっこう分けてくれる(笑)。だからみんなの「これを買わなきゃ」的なものを、僕はお金ないから買ってないし、特にそれを気にもしなかった。
僕が育った赤羽は、生活保護の家庭も多かったんですけど、生活保護の子のほうがお金持ってた。普通、小学生のお小遣いって、駄菓子屋で買い食いするくらい数百円とかですよね。でも、生活保護家庭の子は毎月数千円のお小遣いもらってて、当時はその子が母子家庭だったとか、そういう背景は全然わからないんですけど、大人になって考えてみると、「あぁ親の金銭感覚がずれているのかなぁ」と気づく。
ただ、それでお金がないから友達がいなくなったとか、嫌われたとかいう経験はしてないので、もしそれに特殊性があるとしたら、僕じゃなくて赤羽という街なのかもしれません。
人気の街・赤羽に「わかってねぇな(笑)」
――今は赤羽もだいぶ綺麗になって、漫画で注目されたりと、人気の街になってますね。
ひろゆき:「わかってねぇな」と思いますけどね(笑)。僕が住んでた団地のエリアって、知的障害者や身体障害者の人が優先的に住めたんですよ。桐ヶ丘団地という。たぶん200棟くらいあったんじゃないかな。
それで、「頭の悪い子」と「知的障害者の子」の差ってすごく微妙なんですよ。単純に頭が悪いのか、知的障害のせいで頭が悪いのかとかわからないんですよ。子供の頃から接してきて、単に「成績が悪いやつ」と思ってたんですけど、大人になってよくよく考えると「そういえば、あの子、知的障害だったのかも」と気づく。
身体障害者もそうで、膝を痛めてフォレスト・ガンプのやつみたなギブスをつけてる子とかもいましたけど、その子は健常者。一方で、身体障害者の子もいて、そうなると身体障害者と健常者の差、区別ってどこにあるんだろうって。区別なんてできないよなぁ、と。だから「ああ、こういう人もいるんだな」くらいの感じで育ってきました。
旧メディアは本当にオワコンなのか?
――先日、TBS『サンデージャポン』に出られてましたが、メディアとの付き合い方は昔と今とで変わりました?
ひろゆき:いや、聞かれたことを答えるだけなのでそんなに変わってないですね。
――ひろゆきさんはテレビを見ないことを公言されてますが、テレビってオワコンでしょうか?
ひろゆき:いや、テレビ局が本気出したら結構強いと思いますよ。カネもあるし、テレビの電波を使いながらインターネット事業もできるじゃないですか。そういう意味では選択肢は多いので、かなり強くなる可能性はあると思います。ただ、経営陣がネットに精通していないから、ネットをちゃんとやる気がない。だから敵としては怖くないですけど、本気出したら勝てないかもしれないですね。
昔のコンテンツのストックがたくさんあって、高齢者がそれをネットで見る時代が来たら、高齢者を総取りできるわけですし。たとえば、昔のドラマのほうの『君の名は』がありますけど、それがネットで簡単に見れるようになったら「じゃあ見たい」ってなります。例えば、ニコニコ動画が「高齢者に刺さるコンテンツを作ろう」と思っても『水戸黄門』には絶対に勝てない。だからすげー強いと思いますね。
全国紙はネットで利益を上げるけど…
――アーカイブが活かせるようになったら脅威ということですね。他のレガシーメディアはどうでしょうか? たとえば新聞とか、
ひろゆき:ああ、新聞は厳しでしょうね。地方じゃ成立しなくなるんじゃないかな。あるルートから聞いたんですけど、夕刊フジとか東スポとか夕刊紙ってあるじゃないですか。「夕刊スポーツ紙がなくなるタイミンがどこか」って話で、たぶんどれか一紙がなくなったら、同時に日刊スポーツ、夕刊フジ、東スポがなくなるみたいです。
――それはなぜでしょう?
ひろゆき:全国に配送しているトラック業者が、同じ業者らしくて、1紙でもなくなると、経済的に成立しなくなるんですよ。「商売にならないんで」って配送してくれなくなる。
全国紙も配達店が配ってますけど「うちの地域では購読者が減ってもう無理っす」となれば、その地域は朝刊が届かなくなる。そういう感じで廃れていくんじゃないですか。ただ、新聞社は頑張れば、ネット側で利益上げることもできますけど、一方で、地方紙とかが一番きついんじゃないかと思いますね。
「エロ本の人はだいぶ苦しんでますよね」
――流通に課題を抱えているメディアといえば、エロ本もあります。
ひろゆき:コンビニが紙のエロ媒体を置かなくなって、エロ本出版社の人はだいぶ苦しんでますよね。これが、すげえマニアックなのとかだと、値段が高くても、アマゾンで注文して買う人いるので生き続けると思うんです。ただ、一般的なエロ雑誌やムックで800円で買えるのは、もう無理なのかもしれないですね。
<取材・文/栗林篤 撮影/林紘輝>