26歳男子が「孤独死現場の清掃人」YouTuberになった理由
年間約3万人にものぼるといわれる孤独死。隣人の顔すら分からないといわれるような現代では、いつ誰の身に降りかかるかも分かりません。そんな彼らの“死後”に立ち会うのが、特殊清掃という仕事です。
東京・大田区にあるブルークリーン株式会社は、特殊清掃や遺品整理を手がけています。孤独死の最前線に立つ、同社の取締役兼現場責任者の鈴木亮太さん(26)に、自身のキャリアや仕事の内容について伺いました。
「他人がやらない仕事に就きたい」チャレンジ精神
――1992年生まれで現在は26歳ということですが、今の仕事に就くまではどのようなことをされていたのでしょうか?
鈴木亮太(以下、鈴木):高校卒業後から社会人となり、初めは広告代理店に勤めていました。ただ、1年ほどしか続かず、しばらくはいろいろな仕事を転々としていましたね。飲食店や家具の配送業者などを渡り歩き、石垣島にオープンしたスイーツショップを任されたこともあります。2017年の夏頃に、特殊清掃の世界へと入りました。
――どういったきっかけだったのですか?
鈴木:現在の代表者が建築関連業の出身だったのもあり、かねてから特殊清掃に興味を持っていたんですよ。先ほどお話したスイーツショップを任せてくれた方でもあったのですが、そこが閉店することになって、しばらくしてから「おい、鈴木行けるか?」と肩を叩かれて、二つ返事で「行けます」と答えたのがきっかけでした。
――人の“死後”に立ち会うことを忌避される方も多そうですが、大丈夫だという根拠はあったのでしょうか?
鈴木:たまたまというか、日頃からYouTubeで関連業者のロケ動画を見ていたんです。当時を振り返ると抵抗がなかったといえば嘘になりますが、それよりも何をしても続かなかった自分を変えたいという思いが強くて、「やりがいを持てる仕事に就いてみたい」「他人がやろうとしないことをやりたい」と、チャレンジしてみました。
――現在の肩書きは取締役兼、現場責任者ですが、どういった役割なのでしょうか?
鈴木:実際の現場を統括するのが主な役割で、提携している不動産業者や葬儀会社とのやり取りも担当しています。事業をゼロから立ち上げたため、僕以外スタッフがいなかったので、自然と任されるようになっていきましたね。軌道に乗り始めたのはわりと最近で、今は個人と法人のご依頼が半々ほどにまでなりました。
清掃現場では遺体と対面する機会はない
――特殊清掃と遺品整理では、作業は異なるのでしょうか?
鈴木:たいていはセットで作業をするので、厳密に区別するのは難しいですね。ただ、特殊清掃は、ご遺体から流れ出た体液によるニオイや汚れを取るのが主な目的です。一般的にいわれる「死臭」という表現がまさしくそうで、最後に亡くなった場所だけではなく、室内に充満することで離れた場所にも染み付くために、専門の道具を使って除去します。その流れで、ニオイの染み付いた遺品の整理も同時進行で手がけるケースがほとんどです。
――現場の「ニオイ」というのは、どういったものなのでしょうか?
鈴木:なかなか表現しづらいですね。現場で嗅がないと分からないというのが本音で、ただ、おそらく誰もが一度嗅いだら忘れられないと思います。
――実際に遺体と対面する機会はあるのですか?
鈴木:僕たちが現場へ入るのは、ご遺体の発見後なので、ほぼ見ることはありません。実際に足をふみ入れるのは警察がすでにご遺体を回収したあとで、ご遺族や大家さん、生活保護の方であれば、行政からの依頼を受けて、現場へと向かいます。