無印良品のホテル「MUJI HOTEL」が日本初オープン、設計者に聞く狙い
無印良品を展開する良品計画が有楽町駅から徒歩5分ほどの並木通り沿いに、世界3番目となる「MUJI HOTEL」が入る世界旗艦店「無印良品 銀座」を4月4日オープンした。
無印良品の思想を体現するホテル、MUJI HOTELは、昨年1月、中国の深センに、6月には北京に開業しているが、無印良品の店舗とホテルが併設されるのは初。
先月20日から予約を開始した「MUJI HOTEL GINZA」には、国内外から多くの予約があり、しばらくは満室状態だという。
「MUJI HOTEL GINZA」は「MUJI HOTEL」の完成形
2日に開催されたメディア内覧会で、良品計画代表取締役社長・松﨑曉氏は冒頭、「2001年11月に開業し“無印の聖地”と呼ばれていた有楽町店が、土地の契約期間終了に伴い、昨年12月2日に閉店。旗艦店を移すかたちで今回のオープンに至った」と説明。
「無印良品、創業当初からの夢」というMUJI HOTELについては、「ちょうど良い価格で日常生活の延長として過ごせる“アンチゴージャス・アンチチープ”がコンセプト。このMUJI HOTEL GINZAは、最も備品などが完備し、環境が整ったMUJI HOTELのひとつの完成形」と胸を張った。
館内施設のうち、地下1階の「MUJI Diner」と、世界最大の売り場面積を誇る1~5階の「無印良品 銀座」は良品計画が運営。MUJI HOTELと、ホテルの朝食会場にもなるレストラン「WA Japanese Restaurant」、ATELIER MUJI GINZA内の「Salon」の3つはUDSが運営する。
6階はATELIER MUJI GINZAとMUJI HOTEL GINZAフロント、7~10階は客室で、寝具やアメニティグッズなど客室の備品類は無印良品の店舗で購入できる。
100年以上前の路面電車の敷石を使用
深セン・北京に続き、MUJI HOTEL GINZAの企画・内装設計・運営を担当するUDSは、設計事務所でありながらホテルの経営・運営をする世界でも稀な会社。デザインホテルの先駆け東京・目黒通りの「CLASKA」などをこれまで手がけてきた。いわば今回の“MUJI HOTEL GINZAの仕掛人”だ。
同社の代表取締役会長・梶原文生氏は「時代の流れや記憶を大切にしながら、新しいものを作っていくことも、ひとつのMUJIらしいかたち。内装は簡素・良質であることを基本に、人間の手では簡単に作れない、時間とともに味が出るような自然素材をふんだんに使用し、デザインしました」と、MUJI HOTEL GINZAの特徴を解説。
フロントカウンターの壁に、100年以上前に銀座を走っていた路面電車の敷石を使用するなど、良品計画が提唱する地域の文化や伝統を取り込む“感じ良いくらし”を表現したという。
また、客室フロアはオフィスからの転用になっているのも特徴。
「もともとホテルを想定した躯(く)体ではなく、奥行きに合わせ間口を広げると、どうしても“アンチゴージャス・アンチチープ”というコンセプトに反した、高級な大きな部屋になってしまう。そのため、間口2.2メートルという妙に細長い印象の客室タイプもありますが、通常のホテルと比べ、天井が高く、家に帰ってきたようにゆったりとくつろげる空間を実現しました」と、コメントしていた。
通常のホテルの運営会社や設計事務所では難色を示す建物の特性を活かした点は、設計からホテルの経営・運営までを行なう同社らしい挑戦と言えそうだ。