日本も他人ごとではない、移民大国フランスが直面する教育問題とは?
4月6日に公開される映画『12か月の未来図』は長年フォトジャーナリストとして世界中を駆け回ったオリヴィエ・アヤシュ=ヴィダルが長編監督デビューした作品です。
フランスのパリ郊外が直面する教育問題を背景に、ひとりの教師と生徒たちが出会い、反発しながらもお互いから学び成長していくという物語です。
公立校であれば大学院まで学費が無料(登録料は学士号で約200ユーロ、修士号で約300ユーロほど)という世界でもトップレベルの教育を誇るフランス。しかし、昨年2018年に起きた「黄色いジャケット運動」に見るように、パリ都市部と郊外では経済/教育格差が広がり、移民、貧困、学力低下が大きな社会問題になっています。
教育システムこそ違えど、似たような社会問題に直面する日本が移民大国であるフランスから学べることはあるのか――。来日したオリヴィエ・アヤシュ=ヴィダル監督にインタビューを行いました。
中等学校に2年間通って作り上げた真実の物語
――主役でベテラン教師のフランソワや生徒のセドゥは不器用で欠点がたくさんありますが、とても人間味のあるキャラクターでしたね。実際のモデルはいるのですか?
オリヴィエ・アヤシュ=ヴィダル監督(以下、ヴィダル監督):実際の教育現場を見るために、貧困地域にあるモーリス・トレーズ中等学校に2年間通って500人の生徒たちと、40人の教師たちと生活をともにしたのですが、登場人物は私が学校で出会った複数の人物を組み合わせて作りあげました。
モーリス・トレーズ中等学校の教師たちが出来上がった映画を観たとき、「あ~、この部分はあの先生だよね」「あの先生ならこういうこと言うよね~」などと言っていて、それを聞いてとても嬉しかったですね(笑)。
生徒役の子供は全員素人の中学生
――映画に登場する中学生たちは全員、プロの俳優ではなく、モーリス・トレーズ中等高校やほかの中学の生徒を起用したと聞きました。
ヴィダル監督:演技が初めての子供たちばかりだったので、撮影の前に何度もリハーサルをしました。でも、子供たちにリアルな言葉を話してほしかったので、セリフを好きなように変えていいようにと伝えていたんです。おかげでかなりリアリティのある映画に仕上がりました。
――ブルジョワ階級の教師フランソワと貧困者層の生徒セドゥ、社会階層の両極端にある二人が出会い、お互いから学んで成長していくというストーリーですが、彼らのような出会いは、実際に起こったことなのでしょうか?
ヴィダル監督:その部分はフィクションです。フランソワのようなベテラン教師を貧困地域の教育困難校に派遣するという政府のプログラムは、架空のものです。