働き方改革で長時間労働は何が変わったか、変わっていないか
会社は本当に何もしてくれないのか?
すると、Aさんはこう答えました。
「すぐに部門長たちで話し合いがあったそうで、上司たちから配慮してもらっている感じはした。2月になり、プロジェクトメンバーが増え、その人がしっかり機能するようになり、2月中旬を過ぎてから少し業務が楽になったと感じた」
そして、この産業医面談の1週間前に、プロジェクトの納期が2か月延びることが決定したので、「この1週間は残業も毎日2~3時間で帰れている」とも言っていました。
3月は定時で帰れる日もありそうなこと、4月には1週間の有給休暇を申請し、認められたこと、めまいはなくなり、寝つきも良くなったとのことも確認できたため、事態は収束の方向に向かうと感じ、産業医として私は胸の内の不安を解消できました。
私の経験上、働き方改革のもと、長時間労働が必ずしも減っているとは言えません。しかし、この1年間は今回のケースのように、会社としての対応をなんとかしようという姿勢を持つ会社が増えてきていることは実感します。
私の過重労働面談(長時間労働者の面談)では、約1~2割の面談者に今回のようなものを含む健康障害リスクを感じます。本人の同意のもと、会社に状況を伝え対応をお願いしますが、すぐに休職を要するレベルでない限り、会社の対応にもできることの限界と、時間的なずれがあるのが実情です。
すぐに人員は増やせないですし、効果が現れるのにはある程度時間がかかるのです。
長時間労働がなかなか減らないのはなぜか?
今回はたまたまうまくいったケースでしたが、この間、上司からも見放されていると感じたりすると、孤立感により症状はさらに悪化し、本当に病気になってしまうこともあります。
企業努力にもかかわらず、長時間労働がなかなか減らない理由はどうしてでしょうか。
多くの会社は、一昨年の電通事件以後、社員の残業時間を本気で減らそうとしています。しかしながら、その対象はあくまで「三六協定」の対象となる社員たち(=若手社員たち)です。
その結果、若手社員から減らした労働時間分の仕事を「三六協定」の対象外の社員たち(=彼・彼女らの上長である管理職)がやることとなり、上長たちの残業時間が増えているようです。このほとんどの管理職は、いわゆる名ばかり管理職と揶揄される中間管理職の人たちであり、残業はしても残業代は出ない人たちです。
一般的に中間管理職は上にも下にも挟まれ、ストレスが多い役職だといわれています。この人たちに、さらに労働時間という負荷がかかるかたちとなってしまうような働き方が長続きしそうもないことは誰の目にも明らかです。