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働き方改革で長時間労働は何が変わったか、変わっていないか

学び

現場では「優秀な若手」ほど疲弊している

 そこで、やはり現状の「三六協定」の対象となっている若手社員にも、可能ならばもっと働いてもらおうというのが、裁量労働制の対象拡大の真意だと私は感じます。

 裁量労働制のもとでは、社員は結果で評価されるから早く帰宅できるといいます。ところが、現場では往往にして、結果を出せる優秀な人にこそ仕事は集まります。優秀な社員で早く帰っているのは、私の知る限りごく少数派です。

 裁量労働制のもとでも、優秀な社員には仕事が集まるがゆえ、優秀な人ほど早く帰ることができないのが実情だと思います。

 多くの優秀な社員たちは、その上司たちが疲労によるバーンアウト(燃え尽き症候群)を心配するほど、日夜働いています。実際にこの1年間は管理職からの相談内容は、メンタル不調者の部下をどうするかよりも、チームのエースが働きすぎ(働かせすぎ)だが心配だという相談が、増えた気がします。

働き方改革は「やる気スイッチ」だ

ビジネス

 昨年始まった働き方改革ですが、この1年で成果が出たかどうかは、まだわかりません。ただ、働く人々の現場では、多くの人の“働き方”に対する意識は変わりつつあることを感じていることは確かです。

 働き方改革の基本的な考え方は、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持ち得るようになれる結果、少子高齢化に伴う労働人口低下などのさまざまな課題も克服可能になり、日本の生産性向上や成長戦略に繋がるということです。

 労働生産性を改善するための手段が働き方改革ではなく、働き方改革こそが人々のやる気スイッチを押して、労働生産性を改善するための最良の手段なのです。

 成果はまだまでないかもしれませんが、多少の変化を感じる今日この頃、この変化が続くことを願ってやみません。

<TEXT/武神健之>

医学博士、産業医、一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。20以上のグローバル企業で年間1000件、通算1万件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を行っている。著書『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』(PHP研究所)発売中

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