ネットで270万円調達して猫本屋を作ったサラリーマンの、したたかな開業戦略
単純なかけ算ではうまくいかない「本屋×〇〇」
――若い世代にも本屋を経営したいと考える人が少なくないようですが、「本屋×〇〇」という掛け算にはまだまだ可能性がたくさんあると思いますか?
安村:たとえばうちも、ただ「本×猫」じゃなくて、そこに「保護猫が常駐」とか「売り上げの一部を保護猫団体に寄付」とか「内装が猫仕様になっている」とか。
オプションでいろいろ詰め込んで見えない掛け算をいっぱいしていますから。単純な掛け算じゃ、やっぱり無理だと思うんですよ。
――多くの人に賛同してもらえたり居心地の良さがプラスされたりするような、単純な掛け算だけじゃないいろんな要素が乗っかっていないと、成功につながりにくい。
安村:うちの場合は、お客さんや支援者に「こういうふうにしたほうがいいよ」とアドバイスをいただくなかで変えていったり維持したりしてる部分もあって、いまがありますし。
2号店を出すのは無理。次のプランは?
――再現性が難しいものを作り上げていかないといけないわけですね。
安村:そうなんです。だからここの2号店を出すのは無理。コピーしたって同じものにはならないし、そもそもコピーは面白くないので、やるとしたら本当に違うことをしなければ。
――新しい「本屋×〇〇」のアイデアは何かあるんですか?
安村:あっても言いません! そもそも、真似されないようにプランを立ててから1年半で開業にこぎつけましたからね。公言しないと実現はしないけど、公言したとたんにライバルができますから、2店舗目のアイデアは本当に動き出すまで言いませんよ(笑)。
――パラレルキャリアのまま、会社勤めは今後も続ける予定ですか?
安村:極端な話、本屋をあと2店舗出すとか、講演活動をしてお金をいただけるようになるとか、そういうことになって時間的にも体力的にも会社員は無理だなとなったら辞めるかもしれませんが。いまはまだそういう発想はないですね。
<TEXT/持丸千乃 撮影/山川修一>