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「9割の議員は将棋の駒のように秘書を使う」元秘書が語る過酷な体験

学び

議員秘書を15年間続けられた理由

舟木彩乃

舟木彩乃さん

 前述したとおり、議員秘書はいつ失職するか予測できない職業です。

 そのため、「それでもなんとかなる」という処理可能感が高くないと務まりません。Aさんの場合は、「これだけは誰にも負けない」という自負と、これまでの経験に裏打ちされた能力を、自らの処理可能感の高さの根拠としていることがわかります。

 そして、想定外の事態が続き、ストレスだらけの議員秘書を15年以上も続けられたのは、何が一番大きなモチベーションになっていたのかと質問したところ、「自分の専門知識や働きが、誰かのために役に立っていること」という回答でした。これは、「利他」的な活動を通じて、日々の営みにやりがいや生きる意味を感じられるという「有意味感」の高さがうかがえる内容といえます。

 Aさんは、こうした首尾一貫感覚の高さでもってストレスを乗り越え、着々とキャリアを積み上げているといえます。

<TEXT/舟木彩乃 構成/井野祐真>

ストレス・マネジメント研究者。千葉県出身。10年以上にわたってカウンセラーとしてのべ8000人以上、コンサルタントとして100社を超える企業の相談に対応。一般企業の人事部や国会議員秘書などを経て、2015年に筑波大学大学院に入学し、17年に修士課程修了。現在、ヒューマン・ケア科学専攻(3年制博士課程)に在籍。研究の一環として、産業や医療の現場でカウンセリングを行なうAI・ロボットの開発にも参加している

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