「優秀な学生がいない」とこぼす採用担当者は、学生の何を見ているのか?
20代は落ち着いて考えるタイミングがない
――これまで多くの学生を見てきて、彼らからどのような印象を受けますか?
秋庭:一括採用の弊害だとも思うんですけど、みんなちょっと落ち着いてゆっくりと考えるタイミングがないんだなと感じますね。大学3年生の夏頃から、やれ、インターンだ、説明会だと始まって、そこから休みなく内定まで一直線というか。サッカーで言うとインターバルって言うかハーフタイムみたいなものがないまま、みんな悩んでるんだなと。
だから、相談にくる学生さんはいろんな希望を持ってこられるんですけど、一回落ち着いて考えてみましょうか、っていうようなところから話を始めていますね。
――会社の設立当時と今で、相談にやってくる学生の差は感じますか?
秋庭:新卒で入社した会社を辞めるハードルが低くなっているなとは感じますね。今の新卒で終身雇用制度の意識はほぼなくなっていると思います。
――男女によって意識の差は感じますか?
秋庭:男女比は半々くらいなんですが、女性のほうが短距離・中距離ランナー的というか。結婚出産を見据えて5~10年のスパンでキャリア考えるので、キャリアチェンジにも意欲的な印象ですね。
反対に男性は長距離ランナー的で、定年まで見据えて長いスパンで後悔しない選択を選びたがる印象ですね。まあ、どちらが良いとは一概に言えませんが。
一度、口に出した夢でも変えちゃっていい
――就活生に向けたアドバイスはありますか?
秋庭:最近出した本の中でも夢とかビジョンが大事だ、みたいな話をしたんですけど、実際、彼らに夢がないわけじゃないと思うんですよね。例えば、大学2年生の頃は居酒屋なんかで酒を飲みながら「俺は将来こうしたい!」とか言うと思うんですよ。
でも、就活ではその夢をしまい込んで、“大人たちに気に入られる夢”にカスタマイズしないといけないって風潮を感じるんです。でも、実際は逆で、昔はこうなりたかったって夢を棚卸しして、これから先の生き方を決めないと、就活は始められないと思いますけどね。
――20代のうちから夢を決めてしまうことを怖いと感じる学生もいる印象を受けますが。
秋庭:確かにそういう悩みは聞きます。でも夢なんてころころ変えちゃっていいんですよ。例えば小学生の頃なんか、メジャーリーガーになりたいとか、パイロットになりたいとか言うじゃないですか。なんで、そう言えるのか考えると、絶対達成したいとか格好悪いという感覚もないし、一回言ったからってそれに固執しなきゃいけないとも思ってないから言えると思うんですよ。
一度言っちゃった夢でも変えていいんですよ。口に出すことで、他の人からアドバイスがもらえることもあるし、それを受けてブラッシュアップもされるでしょう。だからもっと気軽に夢を語ってほしいなと思いますね。僕も20代の頃はベンツに乗りたいとか、ポルシェに乗りたいとか言ってましたしね(笑)。
<取材・文/日和下駄>
【秋庭洋】
人事コンサルティング企業の役員を経て2001年9月にブラッシュアップ・ジャパン株式会社を設立。若年層の雇用のミスマッチ解消に取り組んでいる。著書に『20代の転職成功者は何から始めたのか?』(「20代の転職相談所」名義)などがある