帰宅後時間のルーティン化で人生を2倍生きる。韓国人女性獣医師の教え【週末読みたい本の話】
話題の新刊から、名前は知っているけれどなかなか手が出ない古典まで、時事性の高い政治・経済ニュースの見方が深まる良書の書評を、大手メディアで取材記者歴30年、海外駐在経験もあるジャーナリストが担当する。
今週末に読みたい本は……。
リュハンビン著〈人生をガラリと変える「帰宅後ルーティン」〉文響社
1日の仕事が終わった後、どのように過ごしているのだろうか。
特に予定がなければ家に帰り、食事や入浴、洗濯などの諸事をこなす他、疲れを取るために休んだり、ゴロ寝で過ごしたりする人も多いだろう。
あるいは、友人や同僚と連れだって食事や飲みに行く人や、自己啓発に取り組み、趣味や資格取得、学び直しで習い事や学校に通う人もいるかもしれない。
本書は、1日の仕事が終わった後に自分の時間をいかに使うかが大事で、その使い方次第で人生が変わるという考え方から、有効な時間の使い方をスマートに指南してくれる。
著者は、韓国の女性獣医師で、インフルエンサーとしても幅広く活躍している。しかし、キャリアをスタートしたばかりのころは、疲れて帰って寝るだけの生活が彼女も続いていたという。
その後、仕事以外の時間を充実させるためにはどうすればいいのかと考えてさまざまな工夫を行った。本書は、その中で見出した方法論を紹介している。
著者によると、自分の好きな何かを帰宅後にルーティン化すると意味が出てくるという。最初のうちはうまくいかないかもしれない。しかし、試行錯誤を粘り強く続けていくと自分なりのルーティンが確立し、人生を2倍生きられるようになる。
帰宅後のルーティンは、必ずしも生産的な内容である必要はない。著者は、仕事以外で幸せを感じられることや、仕事以外で能力を発揮できることを考えようと呼び掛ける。
例えば、映画鑑賞やミュージックビデオ鑑賞などなんでも構わない。自分が好きなことで時間をフルに使えばエネルギーは奪い取られない。むしろ、エネルギーが満たされると著者は考える。
スタート時にはハードルを下げ、軽やかに取り組み、完璧を目指さないという姿勢も重要だと指摘する。
「完璧な準備をして始めようとする人のほとんどは、実際にはスタート地点にもつけない」という著者の指摘は的を射ている。
急な夕食の予定が入ってルーティンが完全にできなかった時は、週末にまとめてやろうとするのではなく、ほんの少しでも実行する。
平日の帰宅後の時間を有効活用して積み重ねれば、副業などのサイドプロジェクトが可能になる。そうすれば結果、何もせずのんびりできる週末も確保できると説明する。
帰宅後のルーティンを維持するためには体力も必要だ。新しい何かに取り組み、2カ月間なんとか持ちこたえられれば、その生活を維持する体力がついてくると筆者は記す。
他にも、必要な時間や費用をあらかじめ計算しておく、とりあえず試して合わなかったら断念すればいいといった、彼女自身の試行錯誤の上で明らかになった工夫が数多く言及されている。
もうすぐ4月。新年度のスタートにあたって、生活環境が大きく変わる人もいるだろう。新生活を機に、これまでの自分の生き方を見つめ直すきっかけの一冊に選んでも悪くないはずだ。
キーワード振り返り
・帰宅後のルーティンは、必ずしも生産的な内容である必要はない。
・自分が好きなことで時間をフルに使えばエネルギーは奪い取られない。むしろ、エネルギーが満たされる
・スタート時にはハードルを下げ、軽やかに取り組み、完璧を目指さない
・完璧な準備をして始めようとする人のほとんどは、実際にはスタート地点にもつけない