少子化対策は投資ではない?「異次元の少子化対策」にお金が使われない根本的な理由
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5月7日に放送された『日曜討論』(NHK系)に出演した労働相談や生活相談などに取り組むNPO法人“POSSE”の学生ボランティアとして活動する岩本菜々氏の発言が大きな話題を呼んでいる。番組内で岩本氏は小倉將信こども政策担当大臣に対して「若者が子供を産む以前に貧困によってあらゆる機会を奪われている。そこに対する対応が全くなされていない」と異次元の少子化対策を謳いながらも、適切な対応ができていないと発言。
さらには、と「社会保障の話しになった途端いつも財源の話しから入る。その一方で『オリンピック開催します』『防衛費増額します』となった時は『財源の話しってあったっけ?』って思うんです」と政府のお金の使い方の矛盾点を指摘した。
確かに少子化対策をはじめとした福祉的な支援策を検討する際には“財源”に関する議論は必須と言える。実際、5月7日に加藤勝信厚労相は『日曜報道 THE PRIME』(フジテレビ系)に出演した際に、少子化対策の財源について「年金、医療に使うお金を子どもに持っていくのは、正直言って余地はない」とコメント。また、自民党の税制調査会の幹部を務める甘利前幹事長も、少子化対策の財源捻出のために将来的な消費税率の引き上げも検討している認識を示している。
それでは、なぜ少子化対策は「財源をどうするのか?」という話しになりやすいのだろうか。また、どうすれば少子化問題を解消することができるのかなど、『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』(ポプラ新書)の著者で、京都大学大学院工学研究科教授の藤井聡氏(@SF_SatoshiFujii)に話を聞いた。
既婚者向けの政策ばかり
まず岸田政権が掲げる“異次元の少子化対策”の妥当性については、「合理的に考えれば考えるほど、『まったく期待できない』という実態が浮かび上がるずさんなものです」とバッサリ。
「なぜなら、少子化の最大の原因は、出産適齢期(概ね35~40歳以下)の女性の婚姻率の下落にあるからです。しかし、今回の少子化対策は、『すでに結婚している人に対して、子供を産むかどうかの判断に働きかけようとするもの』で埋め尽くされており、“出産適齢期の女性の婚姻率の上昇”のために必要な対策が含まれていません」
続けて、「日本はフランスなどと違い、『出産は婚姻が前提である』という規範が強い。そのため、出生数を上げるには必然的に婚姻率を上げることが求められます」と日本の出産に至るまでの状況を指摘。
「結婚しても晩婚なら出産数は必然的に減り、若年結婚なら必然的に出産数は増えます。誠に遺憾なことに、岸田内閣はこの程度の当たり前の認識さえ持っていません。実際、異次元の少子化対策の内容を見ると、経済的支援強化として児童手当の所得制限を撤廃したり、保育士の負担を減らして保育サービスの充実化を図ったりなどが“柱”とされています。ですが、これらは既婚者をターゲットにしている政策ですよね」
岸田首相が推進している少子化対策はやはり期待できないものであり、現状を放置していると少子化に歯止めがかかることはないかもしれない。