他者を振り回す“不機嫌ハラスメント”とは?イライラしてしまう人の特徴も
セクハラやパワハラはもちろん、スメハラやロジハラなど、ここ数年間でさまざまなハラスメントが日常生活に定着しているのはご存じの通りだろう。昨今、また新しいハラスメントが広まろうとしている。
2022年12月23日に出版された『フキハラの正体 なぜ、あの人の不機嫌に振り回されるのか?』(ディスカヴァー携書)では、不機嫌な態度を取ることによって周囲にネガティブな影響を与える“フキハラ”という概念をまとめた内容になっている。
確かに常にイライラしている人が近くにいると、直接的に何かされたわけではないにもかかわらず、心がしんどくなることは多い。毎日を円滑に過ごしたいのであれば、フキハラについて詳しく知っておいて損はないかもしれない。同書の著者で、慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科教授の満倉靖恵氏に話を聞いた。
フキハラは「不穏な空気の正体」
まず、“フキハラ”とはどういうハラスメントなのだろうか。
「不機嫌な態度をとって、相手や周囲の人たちに不快な思いをさせたり、過剰に気を遣わせたり、精神的な苦痛を与えることです。フキハラは本人が意図している・いないに関係なく、日常的に起こりえます」
具体的な被害として、フキハラ加害者の一挙手一投足にビクビクしたり、“気を遣えオーラ”を感知しやすくなったりなどがある。また、その結果として、常に萎縮して何かに怯えるようになって気が休まらず、無性にイライラすることも増えてしまうという。
自分のイライラは伝染する
「フキハラがもたらす実害として、仕事のプロジェクトが行き詰まったとき、チーム内に重苦しい空気が流れることが挙げられます。また、会社や学校でのストレスを持ち帰り、常に家の中で不機嫌でいる家族がいる場合、当然居心地の悪い場になってしまいます。このように、不穏な空気の正体がフキハラであることは少なくないです」
ちなみに、フキハラをする人の特徴は、「気分屋、かまってちゃん、愚痴っぽい人、自分が中心にいないことに不満を持ちやすい人」が挙げられるらしい。なぜ“不機嫌”に触れるとネガティブな状態に陥ってしまうのか。満倉氏は「フキハラは脳の影響によるもの」と語る。
「人間の感情は脳の中で生まれます。脳波を測定したところ、“好き”や“楽しい”といったポジティブな感情は高まりにくく、高まったとしても維持されにくい。その一方で、“嫌い”や“イライラ”いったネガティブな感情は、ちょっとしたキッカケで急速に高まり、さらには1度熱が上がるとなかなか冷めにくいのです。
つまりは、人の脳はポジティブにとても鈍感で、ネガティブに対する感受性はとても高いということがわかりました。ちなみに他人が不機嫌になると、知らず知らずのうちに“伝染”して自分自身もネガティブな気持ちになる……ということも明らかになっています」