海外と逆行する「マイナンバー制度」の謎。情報漏洩のリスクをどう捉えるか
2022年10月13日、河野太郎デジタル相は2024年秋に健康保険証とマイナンバーカードを一本化する“マイナ保険証”に切り替える方針を発表した。「保険証がなくなる」ということは実質的なマイナンバーカードの義務化とも言えそうである。
しかし、その進め方がどうにも急すぎる印象が強く、批判や疑問の声も多く上がっている。なぜ政府は多額な予算を割いてまで推し進めているのだろうか。マイナンバー制度に精通している弁護士の出口かおり氏に分かりやすく解説してもらった。
マイナンバーのメリットは?
2016年1月から施行されたマイナンバー制度ではあるが、今日までにどのような恩恵があったのだろうか。出口氏はまずそのメリットを次のように語る。
「マイナンバーカードは運転免許証を持っていない人にとって、顔写真付きの公的身分証明書として利用できますから、『公的な身分証』の選択肢が増えたことはメリットかもしれません。
ただ、役所でも、職場でも本人確認をする際に、『マイナンバーカードを持っていない』『マイナンバーカードを示すことができない』というだけで、変わり者扱いされ、社会的に排除される恐れがあります。使いたい人だけが取得すれば良いだけで、無理に持たせようとする必要はありません」
個人情報が売買される可能性も?
そのうえで、出口氏は「政府は、“個人情報を統一で管理するわけではなく、国の行政機関や地方公共団体など、個別の機関で分散管理します”と強調するだろう」推察する。
「しかし、将来の政府の考え方次第では、国民の個人情報を統一的に管理するかもしれません。あるいは、各機関から漏えいしたデータが名簿業者や探偵業者にわたるなどして、知らず知らずのうちに個人情報が売買される可能性は否定できません」